K バレエカンパニー『くるみ割り人形』大阪公演記者懇談会

ワールドレポート/大阪・名古屋

すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna

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12月10日(金)にKバレエカンパニー『くるみ割り人形』大阪公演がフェスティバルホールで行われることに先立ち、大阪で記者懇談会が行われた。
登壇したのは、大阪公演で『くるみ割り人形』の主役・マリー姫を踊る2人、日髙世菜(17:00公演)と飯島望未(13:00公演)。2人は、日髙が兵庫県出身、飯島が大阪府出身と共に関西出身、それに2人とも、これまで海外のバレエ団で数々の主役を踊るなど活躍した上で、今年、Kバレエカンパニーに移籍と、共通点が多い。

今回、芸術監督の熊川哲也は来阪はしなかったが、2人の魅力について、次のようなメッセージを寄せている。
日髙世菜について「ひと言で表現するなら、完璧なバレリーナの象徴と言えるでしょう。長い腕やしなやかな脚のラインなど理想的な身体はまさに神からの贈り物であり、なおかつその身体を自在に、極限までコントロールできる強靱なテクニックの持ち主でもある。踊り心や探究心、役の感情の運び方、どれを取っても非の打ちどころがなく、すべてにおいて成熟した彼女の踊りには常に別格の芸術性を感じています」。
また、飯島望未については「非常にドラマティックなダンサー。私自身、彼女の数ある美点の中でも感情豊かに役を生きることのできる優れた演劇性を特に高く評価しています。Kバレエ入団後初の主演作として踊った10月の『シンデレラ』でも素晴らしいヒロインを演じてくれましたが、この『くるみ割り人形』においても観客が物語に感情移入することのできる素敵なマリー姫を見せてくれる筈です」。

日髙は、このKバレエカンパニーの熊川哲也版『くるみ割り人形』について、「分かりやすく、誰もが楽しめるバレエ。また、つくづく総合芸術だなと感じます。Kバレエの『くるみ割り人形』は舞台セットも衣裳もオーケストラも本当に豪華。私がこれまでにいた海外のカンパニーでは、そこまでは感じられなかったので」、また、難しい点についての質問がとぶと、「1幕は少し登場するもののほとんど踊らず、2幕で突然すごく踊る」、最初から役に入り込んでいくのとは違う構成のなかの難しさを語ってくれた。
また、飯島は「雪のシーンなどすごい量の雪が降るなかで踊るシーンなど群舞も素晴らしい」と様々な場面に見応えがあることを話し、また、日髙と同様に総合芸術としての魅力を強く感じている様子。そして、それを支えるスタッフについて「スタッフの一致団結、ファミリー感がとても良いなと思います。アットホーム」、だからこそ、良い舞台になっていくのだろう。

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© Ayumu Gombi

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© Yumiko Inoue

さて、日髙がロシア国立ワガノワ・バレエ・アカデミー卒業後、ルーマニア国立バレエ団、その後アメリカのタルサ・バレエに移籍し、どちらでもプリンシパル、飯島がヒューストン・バレエ研修生から同団に入団しプリンシパルに、と海外で輝かしい活躍を重ねている。傍目からは、海外の方が日本よりもバレエを踊って行くには良い環境なのではないかと想像してしまい、今、日本のKバレエカンパニーに移籍した理由、その思いを聞いてみた。

日髙は「私は、学びたいと思ってロシアに留学したのですが、その頃から、学び終わったら日本に帰るつもりでした。ですが、せっかくだから、オーディションを受けてみたらということで、受けてみて、海外で踊る機会をいただきました。そんななか、いつかは日本に帰りたいとずっと思っていました。できたら、若いうちに帰って日本で踊りたいと。やっと日本に帰ることができる、という気持ちです」と、バレエはいつ踊り終えなければならないか分からないものなので、できるだけ早い年齢のうちに日本に拠点を移したかったと話した。
一方、飯島は「私は逆に海外に行きたくて海外に行きました。舞台数も多いですし、バレエが浸透しています。日本ではまだまだ浸透してませんが、それを感じるなかで、私のSNSを観て(ファッションについての発信も積極的に行っており、現在シャネルのビューティーアンバサダーにも就任している)バレエに興味を持ってくださる方々がいらっしゃって。日本にバレエをもっと浸透させていくことに貢献できたらと考えるようになりました。私の方から熊川さんにコンタクトを取らせていただいて、受け入れていただきました」。
それぞれの思いが興味深い。
また、二人にとって、この会場となるフェスティバルホールは、観客として何度も足を運んだ場所。そこに立つ期待や責任感、家族や友人にも観てもらえる喜びや、育った土地だからの安心感についても話してくれた。

最後に、新型コロナ禍のなかで出掛けることにまだ慎重にならざるを得ない方々もいらっしゃるでしょうとした上で、「そういうコロナ禍といったことを忘れさせてくれる作品だと思います。悩んでいらっしゃるかと思いますが、非日常を味わいに観に来ていただけたら」と日髙。飯島は「移動がはばかられる時かと思いますが、私達も頑張りますので、このファンタジーを観客の皆様と共有できたら。この12月、日本で一番熱い場所にします」と意気込みを語った。

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© Hidemi Seto

K バレエカンパニー『くるみ割り人形』大阪公演

2021年12月10日(金)
指揮:井田勝大
管弦楽:シアター オーケストラ トーキョー
主催:フェスティバルホール
https://www.festivalhall.jp/program_information.html?id=2608

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