環佐希子振付『7つのジュエリーファンタジー』やサイトウマコトの新作『S』ほか──環バレエ団「初秋のバレエコンサート」

ワールドレポート/大阪・名古屋

すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna

環バレエ団

『S』サイトウマコト:振付、『7つのジュエリーファンタジー』環佐希子:振付

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『白鳥の湖』より第3幕 宮殿の大広間
オディール:池田由希子、王子:上村崇人
撮影:大藤飛鳥(テス大阪)

『白鳥の湖』より3幕〜宮殿の大広間〜で始まったトリプルビル。伸びやかなテクニックとイキイキとした表情の佐々木嶺のピエロで一気に舞台に引きこみ、それぞれの個性を活かしたディヴェルティスマンが続いた。オディール&王子は池田由希子と上村崇人。はっきりとした意志がよく伝わるオディールで、軽く動く身体、高めのパッセも良い。王子ののびやかで幸せそうなジャンプも良かった。

次に上演されたのはサイトウマコト振付のコンテンポラリー新作で『S』。「ゴジラ」の曲で知られる伊福部昭が中国で見た四方の壁全面に仏像がはめ込まれた堂の迫力と感動にヒントを得て、作曲したというピアノ協奏曲「リトミカ・オスティナータ」(「執拗に反復する律動的な音楽」の意だという)を使った。五拍子や七拍子といった日本語の韻文の奇数律動の反復を基礎とした曲で、日本を含めた東洋の空気感が漂う。そのなかで、コロナ禍の現代の社会を映しているのだろうか──苦しむ人、また、手を差し出し助けるように見える人──クライマックスには、十川みどりがゆったりと全体を取り仕切るように。そして、少年のように細い身体の十川大希が軽さと透明感を持って踊る。加えて15人の群舞の迫力、そのエネルギッシュな踊りに希望が見えるような気がした。

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『白鳥の湖』より第3幕 宮殿の大広間
花嫁候補:米田真理、福井一葉、宮田愛里、米田くるみ、福永琳美
撮影:大藤飛鳥(テス大阪)

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『白鳥の湖』より第3幕 宮殿の大広間
ピエロ:佐々木嶺
撮影:田中 聡(テス大阪)

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『S』撮影:大藤飛鳥(テス大阪)

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『S』撮影:田中 聡(テス大阪)

ラストは、故・環佐希子振付『7つのジュエリーファンタジー』。宝石は大自然のエネルギーが結晶となったものと、色も硬度も輝きも異なる宝石をバレリーナたちになぞらえて、ファンタジックに創りあげた作品だという。それぞれの宝石の色のチュチュを身につけたバレリーナたちの踊りは、とにかく華やか。そんななかでも、ダイアモンドの福井一葉の宝石の女王であるかのような堂々とした風情、赤紫のチュチュでアレキサンドライトを踊った米田くるみの、登場したとたんに場の雰囲気が変わる踊りが特に印象に残った。全体に、正しい広がり、正しく伸びる、伸びようとする──そんな空気感に包まれた作品で、清々しさを感じた。
(2021年9月20日 大阪メルパルクホール)

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『7つのジュエリーファンタジー』
アレキサンドライト:米田くるみ
撮影:田中 聡(テス大阪)

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『7つのジュエリーファンタジー』
ダイアモンド:福井一葉、エメラルド:池田由希子、スタールビー:宮田愛里
撮影:大藤飛鳥(テス大阪)

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『7つのジュエリーファンタジー』撮影:田中 聡(テス大阪)


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