敏捷でテクニックに優れた若いダンサーたちが活躍した、法村友井バレエ団の『不思議な仔馬』

ワールドレポート/大阪・名古屋

すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna

法村友井バレエ団

『不思議な仔馬』アレクサンドル・ラドゥンスキー:原振付、法村牧緒:芸術監督・演出・振付、法村圭緒:振付

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不思議な仔馬:久村萌子
© 尾鼻文雄(OfficeObana)(すべて)

日本人で初めてロシアのワガノワ・バレエ学校に留学した法村牧緒。帰国後、日本でロシア・バレエの上演に尽力しているが、そのなかでロシアでは親しまれているが日本のバレエ団の上演はほとんどないものが紹介されることがある。『不思議な仔馬』(原題は『せむしの仔馬』Конёк-горбунок)もそうだろう。物語はロシアの民話に沿ったもの。法村友井バレエ団としての初演は、1987年に親子劇場用に法村牧緒が振付けたものだった。今回は、10年ぶりで4回目の上演となった。

この演目、やはり気になるのはタイトルロールの"仔馬"役。可愛らしく空中でしなる脚は必須なのかもしれない。今回、その"不思議な仔馬"を踊ったのは久松萌子。小柄なのも、この役にピッタリで、高い身体能力を活かして、しなやかに、そして敏捷に、空中の形が眼に残るジャンプを見せてくれた。全体に、くったくなく明るい雰囲気が出ていた。また、イワンは新たな注目株と言えそうな池田健人。彼も小柄だが、バレエの高いテクニックを楽しませてくれたとともに、イワンという役に合う人の良さのようなものが滲み出たのもまた良かった。小柄なダンサーは合う役が限られてしまうといったこともあるが、この仔馬とイワン、二つの役は、むしろその方が合う役柄。

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お姫様:春木友里沙

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お姫様:春木友里沙、イワン:池田健人、不思議な仔馬:久村萌子

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イワン:池田健人、お姫様:春木友里沙子

一方、お姫様役は、一昨年の『海賊』で主役デビューし、文化庁芸術祭新人賞に輝くなど高評価を得ている春木友里沙。華があり、新人ながら着実に一歩一歩と進んでいるように見える。恵まれた容姿に安定した技術、演技も自然で的確だ。また、王様役の奥田慎也も想像以上に良かった。我が儘で困った王様だが、駄々っ子のようで憎めないキャラクター、思わずクスリとしてしまうような愛嬌があった。

シャーマンの堤本麻起子、ジプシーの法村圭緒、中内綾美、法村珠里は、民族舞踊の魅力を存在感たっぷりに。ちなみに法村珠里は出産を経て、久し振りの公演の舞台への復帰だったのではないだろうか。

そして、クラシック・バレエらしい魅力を満喫できる海の女王(神木遙)と海の王(井口雅之)を中心としたアンサンブルを含む海のシーンは、基礎がしっかりしみ込んでいるダンサーたちだからこその美しさを見せてくれた。
(2021年6月6日 あましんアルカイックホール)

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ジプシー:法村圭緒、中内綾美、法村珠里

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海の女王:神木遥、海の王:井口雅之

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イワン:池田健人、不思議な仔馬:久村萌子

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王様:奥田慎也

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イワン:池田健人、不思議な仔馬:久村萌子、お姫様:春木友里沙
© 尾鼻文雄(OfficeObana)(すべて)

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