脇塚優がフランツ役でみずみずしい主役デビュー、カンパニーでこぼこ『コッペリア』

ワールドレポート/大阪・名古屋

すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna

カンパニーでこぼこ

『コッペリア』脇塚力:振付

一昨年のローザンヌ国際バレエコンクールで第4位を受賞した脇塚優。コロナ禍のなか、サンフランシスコ・バレエ・スクール留学中だった彼は、ヒューストン・バレエへの入団が決まっている。プロダンサーとしてスタートする前に、父・脇塚力が主宰するカンパニーでこぼこで全幕初主役デビューを飾った。演目は、カンパニーでこぼこの旗揚げ演目でもある『コッペリア』。第1回公演でスワニルダ&フランツを西田佑子&脇塚力が踊った舞台が鮮明に記憶に残っている。今回、守山俊吾指揮、テアトロ・バレエ・Orchestra大阪の演奏に乗せて行われた。

222osaka_01.jpg

スワニルダ:中山恵美子、フランツ:脇塚優
撮影:田中 聡(テス大阪)

222osaka_02.jpg

フランツ:脇塚優
撮影:文元克香(テス大阪)

実は、この公演、直前に大きな変更を迫られた。本番予定の4月25日から緊急事態宣言期間に入ることになり、急遽、リハーサル日の予定だった24日に本番を前倒し。昼夜2公演を夕方の1公演に。そんな状況にも関わらず500人近い観客が来場した。その訪れた2公演の観客すべてのチケットを入り口で1公演に引き換えた制作スタッフの手際の良さも素晴らしかった。この舞台はマチネキャストで行われ、25日には無観客の映像配信がソワレ予定のキャストで行われた。

222osaka_03.jpg

スワニルダ:岡田倖奈、フランツ:脇塚優
撮影:文元克香(テス大阪)

222osaka_04.jpg

お友達(結婚の踊り):福井友美、松本昭浩
撮影:田中 聡(テス大阪)

脇塚力の演出・振付は、気取らず、ともするとバレエらしくはないと感じる人もいるかもしれないのだが、現代っ子でも違和感なく等身大で楽しめるところが大きな魅力。その魅力をお転婆な普通の女の子、という感じでスワニルダを踊って体現したのが岡田倖奈。友人たちのなかで決して特別な存在ではない、どの女の子にも、いろんな恋や悩みなどなどがあるけれど、今日はスワニルダのお話、という感じ。
そして、フランツは脇塚優(25日も)。少年ぽいあどけなさが残る彼はフランツにピッタリ。幸せにな気持ちがあふれるようなジャンプは羽が生えているかのようで、パの形も美しく、これからどんどん伸びそうな気がする。プロになっての活躍が益々楽しみになった。コッペリウス博士の脇塚力もさすがに良い味が出ていて、親子共演の2幕の掛け合いの間合いも楽しめた。
25日に無観客で行われた方のスワニルダは中山恵美子。数々の主役を重ねる彼女、美しいラインを見せながら、"でこぼこ"らしいコミカルさを持ってしっかり表現、物語に引き込んでくれた。
脇にも良いダンサーが何人も。特に、通常『コッペリア』には使われないドリーブの曲も使われて踊ったジプシーの中心の中嶋美晴はスタイルも良く、民族舞踊独特の迫力もたっぷり。スワニルダの友人たち、藤岡麻友、木村友紀、西光奈笛、福井友美(25日は、木村、西光にかわって、岡田倖奈、嶋原史織)も、それぞれのキャラクターが活かされて自然な流れを作っていた。
(2021年4月24日 東リ いたみホール)

222osaka_05.jpg

牧師:永山太加宏、シスター:岡田智子、嶋原史織
撮影:文元克香(テス大阪)

222osaka_06.jpg

ジプシー:中島美晴、ほか
撮影:田中 聡(テス大阪)

222osaka_07.jpg

コッペリウス博士:脇塚力 撮影:田中 聡(テス大阪)

222osaka_08.jpg

フランツ:脇塚優 撮影:田中 聡(テス大阪)

記事の文章および具体的内容を無断で使用することを禁じます。

ページの先頭へ戻る