オデット・オディールに松岡梨絵を迎えた岡田兼宜プロデュース公演『白鳥の湖』全幕

ワールドレポート/大阪・名古屋

すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna

TOMOTAKA BALLET PRODUCE

『白鳥の湖』岡田兼宜:演出・構成・企画

関西を拠点にダンサーとして活躍する岡田兼宜がプロデュースした公演。新型コロナ禍で舞台が減るなか、昨年8月にはコンサート形式の公演「Deesses」を、そして今回は『白鳥の湖』全幕公演。それぞれが所属するバレエ団の公演は中止や延期といった状況の実力派ダンサーたちも多数集った舞台となった。

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オデット:松岡梨絵、ジークフリート王子:岡田兼宜 撮影:岡村昌夫(テス大阪)

オデット&オディールは元Kバレエカンパニーの松岡梨絵。技術に安心感があるのはもちろん、マイムが語るように伝わり、感情表現が自然。オデットでは繊細さのなかに、ただ弱々しいだけではない"芯"を感じさせるアクセントがあり、オディールでは気品のある華やかさが魅力的だった。ジークフリート王子は岡田が自ら踊った。丁寧な役作りで、彼が他の役を踊る時とは違うスッと抜けたような雰囲気、加えて、簡単に騙されてしまいそうな人の良さがにじみ出て好感が持てた。

悪魔ロットバルト(山口章)と家庭教師ウォルフガング(夏山周久)は、違うダンサーが演じながらも重なる演出。二人は共謀している? もしくは、魔法で化けている? ── 観客にそんな想像をさせる。また、舞踏会の場面の花嫁候補、各国の花嫁(高田万里、西川奈央子、北沙彩、椿原せいか)は、それぞれ、ディベルティスマンの男性にエスコートされ、それぞれの国の姫であることが自然に現されていた。そしてラストは、コール・ド・バレエが力を合わせて悪魔を追い詰める。オデットは悲しくも犠牲になるが、白鳥たちはワンピース姿の乙女に戻り、王子が倒れたオデットを悲しげに抱え上げた姿で幕。自己犠牲を思わせる切ない幕切れだった。

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オディール:松岡梨絵、ジークフリート王子:岡田兼宜 撮影:岡村昌夫(テス大阪)

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オディール:松岡梨絵、ジークフリート王子:岡田兼宜 撮影:岡村昌夫(テス大阪)

1幕の王子の友人のパ・ド・トロワ(高田万里、北沙彩、上牟田嵩人)、舞踏会での王子の友人4人での踊り(吉村茜、増野佳恋、末原雅広、豊永太優)や、スケールの大きな大人の魅力たっぷりのスペインの踊り(坂田麻由美、尾関夢惟、郷原信裕、大西慎哉)をはじめとしたディベルティスマンでのソリストたちも充実しており楽しめた。
(2021年1月24日 メルパルクホール大阪)

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王子の友人の踊り:高田万里、北沙彩、上村崇人 撮影:岡村昌夫(テス大阪)

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王子の友人の踊り:吉村茜、増野佳恋、末原雅広、豊永太優 撮影:大藤飛鳥(テス大阪)

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ハンガリーの踊り:河森睦生、脇塚力、ほか 撮影:岡村昌夫(テス大阪)

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オディール:松岡梨絵、ジークフリート王子:岡田兼宜、ほか 撮影:大藤飛鳥(テス大阪)

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オデット:松岡梨絵、ジークフリート王子:岡田兼宜、ほか 撮影:岡村昌夫(テス大阪)

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