宮本萌がクララ、幸村恢麟がくるみ割りの王子、──貞松・浜田バレエ『くるみ割り人形』お伽の国ヴァージョン

ワールドレポート/大阪・名古屋

すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna

貞松・浜田バレエ団

『くるみ割り人形』貞松正一郎、長尾良子:振付

例年、"お菓子の国ヴァージョン"と"お伽の国ヴァージョン"の2つの異なる演出で2日間の『くるみ割り人形』の上演を行っている貞松・浜田バレエ団。今回は、新型コロナ禍の中、一旦は、29日の1公演に変更ということで"お伽の国ヴァージョン"のみとされたが、最終的には28日の夕方にも公演が行われることになった。だがヴァージョンは変えず、同じヴァージョン、同キャストで2公演が行われた(29日公演を鑑賞)。

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クララ:宮本萌、ドロッセルマイヤー:貞松正一郎

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クララ:宮本萌、王子:幸村恢麟、ねずみの王様:芦内雄二郎
撮影(すべて):古都栄二(テス大阪)

クララを踊ったのは宮本萌。明るく屈託のない子供らしさが自然に出るのが良い。加えて戦いの場面では毅然とした強さ、賢さが現れて魅力的だった。くるみ割りの王子は幸村恢麟、小柄ながらクラシックの基礎に正確で端正な踊り、王子らしいノーブルな雰囲気を漂わせた。ドロッセルマイヤーはこの版が創られた最初から演じ続ける貞松正一郎。優しい雰囲気で場を取り仕切る姿にはバレエ団内での役割も重なるように思える。

グラン・パ・ド・ドゥを踊るお伽の国の女王と王は、廣岡奈美と水城卓哉。廣岡の伸びやかで、女王らしくまっすぐクリアな意思を感じさせる踊り、品と甘い魅力の両方を兼ね備えた水城卓哉の踊り。2人のバレエテクニックが高いレベルであったことは言うまでもない。

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お伽の国の女王:廣岡奈美、お伽の国の王:水城卓哉

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クララ:宮本萌、王子:幸村恢麟

闘牛士がよく似合う武藤天華と松尾珠里中心のロライロ&エスパーダ(スペイン)、憂いの上に崇高さも感じさせる佐々木優希と桑田充を中心としたシェヘラザード(アラビア)、コサックダンスの鮮やかさで大きく盛り上がった恵谷彰を中心としたトレパークなどディヴェルティスマンもそれぞれ楽しめた。

そして、やはり、毎年、「今年もこれを観られて良かった!」と実感するのは、このバレエ団だからこそと思えるスピーディで複雑な隊型変化をともなう1幕最後の雪のワルツ。今回の雪の女王と王は名村空と大門智で、レベル高いコール・ド・バレエとともにゾクゾクする場面に仕上げていた。来年は、また、2つのヴァージョンが上演されることを期待したい。
(2020年11月29日 神戸文化ホール・大ホール)

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シェヘラザード:佐々木優希、桑田充、ほか

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クララ:宮本萌、ドロッセルマイヤー:貞松正一郎、ねずみの王様:芦内雄二郎

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雪の女王:名村空  撮影(すべて):古都栄二(テス大阪)

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