ワディム・ソロマハをパートナーに石黒優美がつつましやかなジゼルを踊った──岡田純奈バレエ団

ワールドレポート/大阪・名古屋

すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna

岡田純奈バレエ団

『ジゼル』エレーナ・A・レレンコワ:演出・再振付

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『ジゼル』ジゼル:石黒優美、アルブレヒト:ワディム・ソロマハ
撮影:和光写真(すべて)

当初、『ラ・バヤデール』が予定されていたこの公演。新型コロナ禍で、振付のエレーナ・A・レレンコワが来日出来なくなり、7年前の2013年にレレンコワ振付で上演した『ジゼル』の再演に変更となった。また、例年、オーケストラの演奏で公演を行っているが、コロナのなか難しいということで録音音源での上演に。それでも(というか、だからこそ、だろうか)、マスクをしての稽古を重ねた主役からコール・ド・バレエまでのダンサーたちの気持ちを一つにした踊りで、心がこもっていることがしみじみと感じられる良い舞台に仕上がっていた。

ジゼル&アルブレヒトを踊ったのは、石黒優美&ワディム・ソロマハ。石黒は素朴な雰囲気に美しい身体のライン、甲の使い方も美しいダンサー。そして、1幕よりも2幕の方が断然良かった。長い手脚で優しくアルブレヒトを包み込むような......1幕では少し地味過ぎるようにも感じられた彼女の個性が、2幕ではとても慎ましやかな魅力に、観ていて心が穏やかになる踊りだった。また、ソロマハはこの役を踊り慣れている人、演技の隅々まで自然で良い。そしてかなりのヴェテランのはずなのに、身体もほとんど衰えていない。2幕のクライマックスではパを変えているところもあったが、アルブレヒトの気持ちが深く伝わって、これはこれで良いように思えた。

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『ジゼル』ジゼル:石黒優美、バチルド姫:山本佳奈

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『ジゼル』ジゼル:石黒優美、ベルタ:内田茜

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『ジゼル』

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『ジゼル』ドゥ・ウィリー:芳賀公美花、西川花菜

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『ジゼル』ペザント:加藤朱莉、野黒美拓夢

また、ソリストも適材適所。ペザント・パ・ド・ドゥの加藤朱莉と野黒観拓夢も目を惹いた。加藤は明るくて華があり、ジゼルとのキャラクターの違いが際立った。また野黒美は好青年らしい端正な踊り、2人とも若さ溢れる魅力が良い感じに出ていた。また、ヒラリオンの浅井敬行は、スラッとしていながら力強さを感じさせる引き締まった身体で、猟師という労働をしていることが立ち姿だけでも伝わり良かった。
奇をてらうことなく、『ジゼル』という物語に丁寧に取り組んだ舞台で、静かに純愛を感じられる良い時間となった。
(2020年10月10日 愛知芸術劇場大ホール)

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『ジゼル』ヒラリオン:浅井敬行

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『ジゼル』ジゼル:石黒優美、アルブレヒト:ワディム・ソロマハ
撮影:和光写真(すべて)

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