牧村直紀、神原ゆかりが踊った佐多達枝振付『カルミナ・ブラーナ』他──ゆかりバレエ公演2020

ワールドレポート/大阪・名古屋

すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna

ゆかりバレエ

『カルミナ・ブラーナ』佐多達枝:振付 他

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『ドン・キホーテ』第三幕よりグラン・パ・ド・ドゥ キトリ:斉藤耀、バジル:牧村直紀
© エー・アイ 撮影:平井晋之介(すべて)

神原ゆかりが主宰する「ゆかりバレエ」の創立30周年記念公演、また同時に、平成27年度名古屋市民芸術祭賞を佐多達枝振付『カルミナ・ブラーナ』で受賞した記念も兼ねての舞台。ラストにはこの『カルミナ─』の抜粋が上演された。

3部構成、第1部ではクラシック・バレエの「バレエ・コンサート」として、グラン・パ・ド・ドゥやヴァリエーションが上演された。そのラストは、ソリスト4人のヴァリエーション付きの『ドン・キホーテ』第三幕よりグラン・パ・ド・ドゥ。主役キトリとバジルを踊ったのは、ともに谷桃子バレエ団の斉藤耀と牧村直紀。ちなみに、牧村は神原の子息でもある。斉藤の華があって明るく軽快な踊りはキトリにピッタリ、牧村も伸びやかでキレのある踊り、滞空感のあるジャンプも良く、2人ともが高度なテクニックで気持ち良く盛り上げた。

第2部はモダン、コンテンポラリー作品を集めて。宮本博の自らと率直に向き合ったような『踏み出す という こと』に始まり、今村早伽や神原が子供たちに振付けた可愛らしいオリジナル作品が続いた。そして、牧村が振付けて南野高廣とともに踊った『Resonanz(ドイツ語で「共鳴」「反響」「響き」といった意』は、そのタイトル通りに男性2人が真剣に向き合い、共鳴しあい、影響を受け合うような......なかなか見応えがあった。この部のラストは松本直樹振付で松本と神原が踊った『誰そ彼』。身体に響く打楽器の音や鐘の音などを効果的に使いつつ、どこかレトロな香りを感じさせて。最後の穏やかな終わり方も良い。

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『踏み出す という こと』宮本博

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『誰そ彼』松本直樹、神原ゆかり

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『Resonanz』牧村直紀、南野高廣

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『圧倒的日常』モダンディーズ

第3部の幕開けはモダンディーズの『圧倒的日常』。中村隆彦の振付で、石井登、高谷大一、佐藤一哉、中村、あすかなおこが踊った。白髪交じりの男性たちが、その年代だからこそ出せる、程よく力の抜けた"味"を良い感じで活かした作品。「カノン」など聴き覚えのある曲を上手く組み合わせた音楽に乗せて、ユニークでシュールな魅力で楽しませてくれた。

そして、舞台全体の最後が佐多達枝振付『カルミナ・ブラーナ』の抜粋。牧村、越智友則、南野と男性3人と神原を中心とした女性達が、人間の根源的なところを歌い上げたこの作品を迫力を持って表現した。人が生きるなかでの歓びや哀しみ、さまざまな感情......、人が"生まれるということ"、"生きると言いうこと"──そこに真正面から向き合った作品。後半のクライマックスには神原と牧村がパ・ド・ドゥを踊った。2人が親子ということをふと思うと、"生"を歌い上げる踊りを、母子で踊るということに特別な意味が感じられる気が。動きの迫力だけでなく、迫るものが感じられる仕上がりだった。
(2020年10月4日 名古屋市芸術創造センター)

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『カルミナ・ブラーナ』より牧村直紀

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『カルミナ・ブラーナ』より

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『カルミナ・ブラーナ』より

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『カルミナ・ブラーナ』より
© エー・アイ 撮影:平井晋之介(すべて)

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