新型コロナ禍のなかで、"カンパニーでこぼこ"らしい演出が楽しかった

ワールドレポート/大阪・名古屋

すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna

カンパニーでこぼこ

『リーズの結婚』脇塚力:演出・振付

本来ならば4月に行われる予定だったカンパニーでこぼこの『リーズの結婚』。新型コロナ禍でかなわず、もともとは別演目を上演予定だった8月22日に延期されて開催された。検温やアルコール消毒と言った対策はもちろんだが、行列を作る際のソーシャル・ディスタンスの目印はバレエの足のポジションの形だったり、「ブラボー!」と叫べないから、その代わりに振ってくださいと、「BRAVO!」と書かれたうちわが配られたり、この団体らしい可愛い工夫が散りばめられていて、「あぁ、バレエが大好きな人たちが開催しているんだ」と実感。

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シモーヌ:郷原信裕、トーマス:デイビット・デ・ピューリー 撮影:田中 聡(テス大阪)

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(昼公演)リーズ:岡田倖奈 撮影:田中 聡(テス大阪)

そして、舞台の上も新型コロナ禍ならではの工夫があった。さすがにバレエを踊るなかで触れあわない訳にはいかないのだが、以前の『リーズの結婚』上演の際には、恋人たちはキスで愛を表現していたのが、今回は、おでことおでこをコツンと合わせて見つめ合って──これが、とにかく可愛い。形式的ではなく、素朴な女の子と男の子が惹かれ合っていることが自然に伝わってくるのだ。ある意味、古典バレエらしくなく現代の小劇場演劇のような感じのようにも思える脇塚力の演出。
カンパニーでこぼこは他の演目でもそういった"バレエっぽさ"からちょっと離れて、現代の普通の子の普通の仕草を取り入れるのが上手い。それに異論を唱える人もいるかもしれないけれど、私は、こういった演出・振付はあっても良いのではないか、この方が受け入れやすいという現代人も多いのではないか、と思う。そして、様々な演目の中でも『リーズの結婚』は特にそれが似合う演目だ。

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(昼公演)リーズ:岡田倖奈、コーラス:脇塚力 撮影:田中 聡(テス大阪)

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(昼公演)リーズ:岡田倖奈、コーラス:脇塚力 撮影:金原優美(テス大阪)

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(夜公演)リーズ:中山恵美子、シモーヌ:郷原信裕 撮影:田中 聡(テス大阪)

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撮影:金原優美(テス大阪)

昼夜2公演で、主要キャストを変えて行われた。昼公演のリーズ&コーラスは岡田倖奈&脇塚力。アランを昨年のローザンヌ国際バレエコンクール4位で話題になった脇塚優が踊っての親子共演。岡田は明るくて素朴な雰囲気が演出に良く合っていたし、脇塚のチャーミングな魅力は健在。そして、脇塚優のアランも良い味、ほのぼのと笑いを取りながら、加えて、伸びやかな手脚を活かしての美しい動きも披露してくれた。
夜公演のリーズ&コーラスは、中山恵美子とクリスタップス・リンティンシュ。中山は知性を感じさせながらの繊細な表現が良く、リンティンシュも演技も動きも自然で、2人が作り出す身体のラインも美しかった。この2人はどちらも、様々な演目で力を発揮しそうなダンサーだなと思う。夜のアランは脇塚力で、とぼけた演技がやはり良い。また、シモーヌは両公演とも郷原信裕。当たり役で、舞台全体の雰囲気を創り出す存在感はさすがだった。全体に優しさが漂う舞台に心が温かくなる気がした。
(2020年8月22日 東リいたみホール昼夜両公演鑑賞)

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(夜公演)コーラス:クリスタップス・リンテンシュ 撮影:田中 聡(テス大阪)

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(昼公演)アラン:脇塚優 撮影:田中 聡(テス大阪)

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(夜公演)リーズ:中山恵美子、コーラス:クリスタップス・リンテンシュ、アラン:脇塚力 撮影:金原優美(テス大阪)

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(昼公演)リーズ:岡田倖奈、コーラス:脇塚力 撮影:金原優美(テス大阪)

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