今年は"お伽の国ヴァージョン"を楽しんだ、貞松・浜田バレエ団『くるみ割り人形』

ワールドレポート/大阪・名古屋

すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna

貞松・浜田バレエ団

『くるみ割り人形』貞松正一郎、長尾良子、高瀬浩幸(ゼリー)、秋定信哉(クッキー)、川村康二(ロライロ&エスパーダ)、松良緑(円舞曲);振付

貞松・浜田バレエ団「くるみ割り人形 お伽の国ヴァージョン」撮影:古都栄二(テス大阪)4259.jpg

お伽の国の女王:廣岡奈美、お伽の国の王:岩本弘平
撮影:古都栄二(テス大阪)

"お菓子の国ヴァージョン"と"お伽の国ヴァージョン"、2つのヴァージョンを持ち、毎年、1日ずつ両方のヴァージョンの『くるみ割り人形』を上演している貞松・浜田バレエ団。今回、21日に、幕開けから登場するクララ(上山榛名)が、くるみ割り人形=王子(水城卓哉)をパートナーに金平糖のグラン・パ・ド・ドゥまでを踊る"お菓子の国ヴァージョン"。22日に、クララ(宮本萌)とくるみ割り人形=王子(幸村恢麟)が、お伽の国の女王(廣岡奈美)と王(岩本弘平)に迎えられ、お伽の国の女王&王が金平糖のグラン・パ・ド・ドゥを踊る"お伽の国ヴァージョン"が上演され、私は22日の公演を観た。私は両ヴァージョンを観る年もあるのだが、2つのヴァージョンは、上に書いた違いだけでなく、全幕を通じて細かく違った演出・振付、工夫が施されている。

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クララ:宮本萌、お伽の国の王子:幸村恢麟
撮影:金原優美(テス大阪)

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雪の女王:名村空、雪の王:大門智
撮影:金原優美(テス大阪)

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クララ:宮本萌、ドロッセルマイヤー:貞松正一郎
撮影:古都栄二(テス大阪)

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金平糖の王女:上山榛名、お菓子の国の王子:水城卓哉
撮影:テス大阪

さて、今年の"お伽の国ヴァージョン"、この団体で育ち、現在、オーストラリアのクイーンズランド・バレエで活躍する岩本弘平が出演、とても久しぶりに日本で踊りを見せてくれたのが嬉しい。しかも『くるみ割り人形』というと、彼は子どもの頃には子役でボンボンキャンディなどに出ていた筈だ。同じ支部教室の同級生で仲の良い幸村恢麟がくるみ割り人形=王子役ということで、ファミリーのような温かさをしみじみと感じさせる舞台となった。
クララを踊ったのは宮本萌。子供らしさが自然に出て、明るく表情豊かな演技に好感が持てた。この役は2幕の花のワルツの中心でも踊るのだが、魔法のように白っぽいワンピースがピンクや薄緑のグラデーションの入った衣装に変わる演出などを、本当に心が浮き立つ様が全身から溢れるように見せてくれた。また、王子の幸村は、小柄ということもあって、普段は高いテクニックを活かしたディヴェルティスマン等で注目されることが多いのだが、今回、王子らしい端正な魅力を見せ、こういった踊りも合うダンサーなのだということをあらためて認識した。

そして、お伽の国の女王と王、廣岡と岩本のグラン・パ・ド・ドゥは、スケールの大きさを感じる踊り。合わせる時間が少し不足したのかも、と思わせる部分もあったのだが、2人ともダイナミックでメリハリがあり、陽性の魅力を感じさせて、この楽しい物語の最後を華やかに盛り上げた。コーダでの廣岡の斜めに進むダブルの入ったフェッテ・アン・トゥールナン、岩本のアラセゴン・トゥールも美しく高テクニックも充分に楽しませてくれた。
また、毎年思うことだが、1幕終わりの雪のワルツは、スピーディで複雑なフォーメーション変化が圧巻。この日は、中心の雪の女王と王を名村空と大門智が踊り、バレエ団の総合力の高さを実感させてくれた。
(2019年12月22日 神戸文化ホール大ホール)

貞松・浜田バレエ団「くるみ割り人形 お伽の国ヴァージョン」撮影:金原優美(テス大阪)3541.jpg

くるみ割り人形:幸村恢麟、ねずみの王様:芦内雄二郎
撮影:金原優美(テス大阪)

貞松・浜田バレエ団「くるみ割り人形 お菓子の国ヴァージョン」撮影:古都栄二(テス大阪)0683.jpg

雪の女王:山野井萌
撮影:古都栄二(テス大阪)

貞松・浜田バレエ団「くるみ割り人形 お伽の国ヴァージョン」撮影:古都栄二(テス大阪)4126.jpg

クララ:宮本萌 撮影:古都栄二(テス大阪)

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