貞松・浜田バレエ団が３年ぶりにドラマティック・バレエ―貞松正一郎版『ロミオとジュリエット』を再演
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ワールドレポート／大阪・名古屋
原 桐子 Text by Tohko Hara
貞松・浜田バレエ団
『ロミオとジュリエット』貞松正一郎：振付
貞松・浜田バレエ団が『ロミオとジュリエット』を上演した。2016年にバレエ団創立50周年記念として初演され、それ以来3年ぶりの再演となる。演出、振付は同バレエ団の貞松正一郎、美術・衣装は二村周作によるもの。
ジュリエット：上山榛名、ロミオ：水城卓哉 撮影：金原優美（テス大阪）
ヴェローナの広場、両家の争い 撮影：古都栄二（テス大阪）
結論を先に言ってしまえば高い満足感を得られた舞台だった。
プロコフィエフの音楽に寄り添い、ロミオ（水城卓哉）とジュリエット（上山榛名）の恋愛模様を軸に据え、モンタギュー家とキャピュレット家の確執や両家のキャラクター、ヴェローナの人々を程よく描くことによって、物語の流れをつかみやすくなっていたと思う。
ジュリエット：上山榛名、ロミオ：水城卓哉 撮影：岡村昌夫（テス大阪）
主役ふたりによる代表的なパ・ド・ドゥはいずれも非常に音楽的で美しい。例えば1幕のバルコニー、パ・ド・ドゥ。他の版の振付と違わず、恋の高まりを表すためにこの場面では跳躍や回転技が多いが、この振付はパを詰め込まずに「間」を取って「静」の動作を作ることで余韻が生まれ、恋に落ちていくふたりの心情をより理解しやすくなっていた。
また、3幕冒頭の寝室の場面、マキューシオ（末原雅弘）、ティボルト（武藤天華）の亡霊がふたりのベッドの上方、天井に近いところに立っていたのも面白い。次に踊られる寝室でのパ・ド・ドゥがより悲劇的に見える。ロミオとジュリエットが悲しんでいるだけではなく苦悩する様が手先足先の動きに表れる。ジュリエットの白いベッドに無造作に置かれたロミオの黒いマントが、不吉なサインのごとく悲劇となる結末を示唆したのだ。
両親にパリス（大門智）との結婚を強要されひとりベッドの前で嘆くジュリエット。その嘆き方は膝をつき身体を丸めて泣き伏す。誰もが胸に覚えのある光景でその自然な演技に好感を持ったことだろう。
ジュリエットが毒薬を飲んだ詳細を知らせる手紙を、使いのジョン神父とロミオが行き違う場面も道行きとして挿入されていて興味深い。ヴェローナの街から追放されてしまったロミオにジュリエットの死を知らせにくるのは、ベンヴォーリオ（幸村恢麟）なのだ。
キャピュレット家舞踏会、撮影：古都栄二（テス大阪）
大道芸人：清田奈保、松尾珠里、宮本萌、上村輝、稲毛大輔、巽誠太郎 撮影：古都栄二（テス大阪）
最後の納骨堂でのシーンもすれ違いで死んでしまうふたりの慟哭、即ち愛するがゆえの死がよく伝わった。初役となった水城、上山は芽吹きの春のような瑞々しい踊りで新たな魅力を感じさせる。
他方、ヴェローナの街での両家の争いのシーンや舞踏会でのマキューシオ、ベンヴォーリオやティボルト、ヴェローナの大道芸人のパ・ド・シスは華やかで、ロミオ、マキューシオとベンヴォーリオが踊るモンタギュートリオのユニゾンもよく揃っていて楽しめた。
二村周作による美術・衣装も壮麗で美しく、回廊をうまく使った舞台装置、深い色調の豪華な衣装も見応えがあり、オーケストラのメランコリックな演奏は耳に心地良かった。
次回に再演されるときを楽しみに待つとしよう。
（2019年9月29日 あましんアルカイックホール）
ジュリエット：上山榛名、ロミオ：水城卓哉 撮影：古都栄二（テス大阪）
ヴェローナの広場、カーニヴァル 撮影：古都栄二（テス大阪）
ロミオ：水城卓哉、マキューシオ：末原雅広、ベンヴォーリオ：幸村恢麟 撮影：古都栄二（テス大阪）
ティボルトの死 撮影：古都栄二（テス大阪）
ジュリエット：上山榛名、ロミオ：水城卓哉 撮影：古都栄二（テス大阪）
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