ヨーロッパのバレエの"今"を垣間見られる作品の数々──アーティスティック・バレエ・ガラ

ワールドレポート/大阪・名古屋

すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna

一般社団法人BALLET OFFICE JAPAN

アーティスティック・バレエ・ガラ

夏のバレエ・ガラが少しづつ増えてきているけれど、それぞれの特徴は? と考えた時、この矢倉鈴奈が代表を務めるBALLET OFFICE JAPAN主催の「アーティスティック・バレエ・ガラ」は、"ヨーロッパの今、を感じられるガラ"──そんな風に実感した。日本では、観る機会がなかなかない作品を多数満喫できる良い舞台だった。

なかでも印象に残った作品を紹介したい。
幕開けは、ポーランド国立バレエの海老原由佳とクリフトフ・シャボによる『Świtezianka』。ロバート・ボンダラ振付の作品で、シンプルな衣裳で、恋人同士がお互いへのトキメキいっぱいに戯れる感じ。ルーマニアのブカレスト国立オペラ座バレエのアダ・ゴンザレスとロベルト・エナケは、レナート・ツァネラのちょっと現代的な振付での『ロミオとジュリエット』よりバルコニーのパ・ド・ドゥ。ジュリエットの衣裳と共布の淡いピンクのストールがアクセントに使われ、ラスト、愛おしそうにストールの香りを確かめるようなロミオの姿が目に残った。

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『Świtezianka』海老原由佳、クリフトフ・シャボ
振付:Robert Bondara
写真提供:BALLET OFFICE JAPAN(すべて)

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『シンデレラ』2幕より 菅野茉里奈、アレクセイ・オルレンコ
振付:ウラジミール・マラーホフ

英国ロイヤル・バレエ団の金子扶生とリース・クラークは、まず、クリストファー・ウィールドン振付『After the rain』。繊細でありながら、どこか艶っぽさを感じさせる金子の踊りに惹き込まれる。

ベルリン国立バレエの菅野茉里奈とアレクセイ・オルレンコは、ウラジミール・マラーホフ振付の『シンデレラ』2幕よりの一節を。この版は、バレエ団を舞台にバレリーナの成長物語として描かれる『シンデレラ』。矢倉と太田紫乃が振付・指導してのコール・ド・バレエとともに楽しませてくれた。

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ブカレスト国立オペラ座バレエ学校特別パフォーマンスより

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『Mozart a deux』兼井美由季、ダニエル・ヴィスカヨ
振付:Thierry Malandain

2部のはじめには、ブカレスト国立オペラ座バレエ学校の子どもたちによる特別パフォーマンス。子どもたちだからこその可愛らしさを活かした演目が微笑ましかった。続いてマランダン・バレエ・ビアリッツの兼井美由季とデュッセルドルフ国立バレエ団のダニエル・ヴィスカヨによる『Mozart a deux』。モーツァルトの優しいメロディーに乗せてのメリハリのある身体の動き、ティエリー・マランダンの振付だ。

海老原とシャボが踊ったドラマティックな『ラ・バヤデール』1幕より、ジュネーブ・グランド・バレエの重成沙羅とアルマンド・ゴンザレスによる、キリスト教の世界観を感じさせるように思えたケン・オッソラ振付『Mémoire de I'ombre』を挟んで、金子とクラークが『マノン』1幕よりパ・ド・ドゥを披露。幸せな2人の時間を自然に素直に演じていて、いつかこの2人での全幕の『マノン』を観てみたい気がした。

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『ラ・バヤデール』1幕より 海老原由佳、クリフトフ・シャボ

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『マノン』1幕よりベッドルームのパ・ド・ドゥ
金子扶生、リース・クラーク 振付:ケネス・マクミラン

衝撃的だったのはナチョ・ドゥアト振付で菅野とオルレンコが踊った『Multiplicity.Form of silence and emptiness』より「チェロとバッハのパ・ド・ドゥ」。東京交響楽団主席チェロ奏者の西谷牧人と演奏とともに踊られ、女性をチェロに見立て男性が弾くという、エロティックにも見える作品、だからと言って品は失わないのはさすが。

ラストはコールド・バレエ付きで『ラ・バヤデール』2幕より。ゴンザレスがガムザッティ、エナケがソロル、海老原がニキヤを踊り、華やかに幕を閉じた。
(3019年8月11日 NHK大阪ホール)

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『Multiplicity.Form of silence and emptiness』より「チェロとバッハのパ・ド・ドゥ」
菅野茉里奈、アレクサンドル・オルレンコ
振付:ナチョ・ドゥアト

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『ラ・バヤデール』2幕より
アダ・ゴンザレス、ロベルト・エナケ
写真提供:BALLET OFFICE JAPAN(すべて)

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