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キトリがガマーシュと結婚?──山本庸督が振付けた『ドン・キホーテ』全幕のクライマックス

ワールドレポート/大阪・名古屋

すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna

Y.S.BALLET COMPANY

『ドン・キホーテ』山本庸督:演出・振付

アメリカで活躍してきた山本庸督が日本に戻り、演出・振付を手掛けた全幕バレエの3作品目『ドン・キホーテ』の初演。独自の演出が散りばめられて興味深い舞台に仕上がっていた。
まず、オーソドックスな演出と違うのは、ドン・キホーテ役の設定。ヨボヨボの老人ではなく、まだ初老の活動的な夢見る男性なのだ。これをイキイキとした表情で芝居心たっぷりに大柴拓磨が演じ、プロローグから引き込まれた。

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キトリ:中浜のぞみ
撮影:尾鼻葵(OfficeObana)

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キトリ:中浜のぞみ、バジル:大巻雄矢
撮影:尾鼻文雄(OfficeObana)

キトリは中浜のぞみ、軽い身のこなしに、ちょっとお転婆な雰囲気がこの役に合っていて、テンポ良く物語が進行した。バジルはこの団体出身で、スロヴェニア国立マリボル歌劇場で活躍する大巻雄矢。高いテクニックを持つ上に、華もあり、やんちゃな雰囲気がバジルにピッタリ。彼には舞台を盛り上げる天性のものがあるように見える。

メルセデス&エスパーダには高井香織とベラルーシ国立歌劇場の待山貴俊。2人の、気品を保ちつつ大人の魅力を感じさせる踊りは、さすが。またジプシーの場面の中心は、板敷まりと振付も担った山本庸督。広がりを感じる踊りで楽しませてくれた。

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ドン・キホーテ:大柴拓磨、サンチョ・パンサ:東文昭
撮影:尾鼻葵(OfficeObana)

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メルセデス:髙井香織、エスパーダ:待山貴俊
撮影:尾鼻文雄(OfficeObana)

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ジプシーたち 撮影:尾鼻文雄(OfficeObana)

そして、この舞台でもっとも驚いた演出は、第3幕はじめの酒場、キトリはロレンツォたちに捕まってしまい、連れて行かれ、ガマーシュと結婚させられることになってしまうのだ。酒場に残されたバジルは、エスパーダたちに慰められながらやけ酒......と、そこで、料理に添えられたナイフを手に取り"名案"を。ナイフでの狂言自殺をひらめくのだ。

ものすごく嫌そうなキトリとご機嫌この上ないガマーシュの結婚式、そこにマントを羽織ったバジルが走り込んできて......、あとはご想像の通り。南米などで、ガマーシュとキトリの結婚ーーのシーンの例があるそうだが、そういうものを観たことがない私。今回、オーソドックスな『ドン・キホーテ』を見慣れている分、余計に、「エッ、キトリ、ロレンツォに連れて行かれちゃった、ガマーシュと結婚??? どうなるの?」と、とてもドキドキしながらのクライマックスになった。ダンサーたちの技量もなかなかで、オリジナリティを心から楽しめた舞台だった。
(2019年8月3日 NHK大阪ホール)

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ジプシー:板敷まり、山本庸督
撮影:尾鼻文雄(OfficeObana)

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バジル:大巻雄矢、ロレンツォ:今中雄輔
撮影:尾鼻文雄(OfficeObana)

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