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古典を尊重した上で考案された独自の演出が興味深かったーー川口節子創立40周年記念特別公演『ジゼル』

ワールドレポート/大阪・名古屋

すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna

川口節子バレエ団

『ジゼル』川口節子:演出・振付

川口節子バレエ団創立40周年の節目に上演された『ジゼル』。多くの興味深い創作作品を手掛けている川口節子だからこそと思える、オリジナリティが散りばめられた舞台に仕上がった。

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ジゼル:中谷友香、アルブレヒト:ウイリアム・リン-イー
撮影:杉原一馬(すべて)

まず、幕が開くとベンチ(あの、その後ジゼルとアルブレヒトが花占いをするベンチ)で編み物をするジゼルの隣の住人(安藤恵子)、その横ではその家族と思える男性(古井慎也)が毛糸の枷を両手に掛けて手伝わされていたりーーほのぼのとした村の様子が自然に伝わる。ジゼルは、このバレエ団のプリマ・中谷友香、控えめで清純な雰囲気が役にぴったり、軽やかでスムーズなヴァリエーションもとても良かった。そして、アルブレヒトは、アメリカのパシフィック・ノースウエスト・バレエ、プリンシパルのウィリアム・リン-イー。優しげな好青年という雰囲気で、とても大柄で彼と並ぶとジゼル役の中谷がより一層華奢に見えて、か弱い存在であることを観客に実感させた。
ペザントは、高橋莉子と長谷川元志、2人ともしっかりとしたテクニックで、結婚の喜びで弾む気持ちを身体全体で表した。

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ジゼル:中谷友香、アルブレヒト:ウイリアム・リン-イー

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ジゼル:中谷友香

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ペザント・パ・ド・ドゥ 高橋莉子、長谷川元志

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ジゼル:中谷友香

2幕、通常、ヒラリオンが火の玉などに怯え......となるが、火の玉でなく、ロマンティック・チュチュのウィリーが数体、吊られたように空を飛んでいく。そして、凜とした魅力のミルタ(太田沙樹)に促され現れるウィリーたちーーコール・ド・バレエは、なんと床から大きなセリで現れる、地の底から上がってくるのだ。その後ジゼルも下手前のセリから登場する。ウィリーのこんな登場の仕方は、私は初めて観たが、思えばお墓の土の中に埋められた娘たちなのだから、横(舞台袖)から出てくるより、地の底から現れた方が理にかなっている気はする。

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ミルタ:太田沙樹

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『ジゼル』

そんな風に、独自の工夫が随所に凝らされているわけだが、ストーリーや踊りは古典を大切にしたもの。ダンサーたちはコール・ド・バレエの隅々まで、丁寧に踊っていて好感が持てたし、ヒラリオンの梶田眞嗣も美しい脚でのアントルシャを観せてくれた。そして、アルブレヒトはダイナミックな男らしさを見せ、ジゼルは風のように、この世のものではないような軽さを感じさせる踊りーーそして、そうでありながら深い愛情を溢れさせていく。とても良いジゼルだった。
(2019年5月19日 愛知県芸術劇場大ホール)

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アルブレヒト:ウイリアム・リン-イー

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アルブレヒト:ウイリアム・リン-イー、ミルタ:太田沙樹

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ジゼル:中谷友香、アルブレヒト:ウイリアム・リン-イー 撮影:杉原一馬(すべて)

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