佐々木大、山本隆之、国田美和など関西の実力派ダンサーが出演した新作『風の森』他──原田高博バレエシアター

ワールドレポート/大阪・名古屋

すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna

原田高博バレエシアター

原田高博バレエシアター第2回コンサート

長年、原田高博のレッスンを受けて来たヴェテランのダンサーたちも多数出演した舞台。新国立劇場バレエで数々の主役を踊って来た山本隆之や数々の賞に輝く佐々木大、恵谷彰や末原雅広など実力派の豪華なメンバーが並んだ。客席の中央には原田が10歳から師事し、惜しまれながら昨夏亡くなった赤松優の遺影が飾られていた。

幕開け最初は、その赤松優バレエ学園から矢野陽子をオーロラ姫に迎えて、恵谷彰、岡田兼宜、佐々木大、山本隆之が王子を務めた『眠れる森の美女』第1幕よりローズアダージオ。若手のヴァリエーションを挟みながら、市原典子が巫女の繊細さをみせ、演技力のある山口章と踊った『ラ・バヤデール』よりパ・ド・ドゥ、笠原千裕と末原雅広による明るく楽しい魅力の『ゴッドシャルク組曲』と続いた。

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『ラ・バヤデール』第1幕よりパ・ド・ドゥ
市原典子、山口章 撮影:金原優美(テス大阪)

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『椿姫』第2幕よりパ・ド・ドゥ
国田美和、山本隆之 撮影:金原優美(テス大阪)

『椿姫』よりパ・ド・ドゥは国田美和と山本隆之。山本はすーっと感情が伝わる自然な演技でさすが。国田は踊り重ねるともっとよくなるのではと感じたが、穏やかさを持って美しいラインをみせた。ちょっとまだ堅いがスタイル良く若さを感じる四谷知永と上村崇人の『ドン・キホーテ』第3幕よりグラン・パ・ド・ドゥ、ヴェテランらしく妖婉な魅力を見せた田中潔身と豊永太優の『白鳥の湖』第3幕より黒鳥のグラン・パ・ド・ドゥ、コミカルな演技満載でテクニックも楽しい丸山祥子、池上彰朗、恵谷彰の『フェアリードール』よりパ・ド・トロワと多彩な演目が踊られた。

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『フェアリードール』よりパ・ド・トロワ
丸山祥子、池上彰朗、恵谷彰 撮影:金原優美(テス大阪)

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『風の森』山猫:佐々木大、牡鹿:山本隆之
撮影:金原優美(テス大阪)

そして最後は、ミュージシャンの小馬崎達也と仲林利恵の生演奏に乗せて、原田高博が振付けた『風の森』だった。自然をアジアの感性を持って表現したように思える演奏に乗って、春、夏、秋、冬と季節が移り変わっていく。冬になると、"自らを誇りながら耐え忍ぶ針葉樹"、"身を纏う全てを切り捨て臨む広葉樹"と、樹々の特性をまるで人に生き方に重ねるように感じさせながら女性群舞で描き、いつの季節も吹き抜ける風を男性群舞で表現した。

中心となる山猫(佐々木大)と牡鹿(山本隆之)の静かな対峙がレベルの高いダンサーによって深みを持って表現されたのが良い。そこに絡む鳥(国田美和)の軽やかで鮮やかなテクニック、その妹分のような可愛らしい兎(飯田萌杏)もアクセント。"自然"はなかなか難しいテーマで、改訂すればもっと良くなるのではないかという気もした。一方、原田の元にはヴェテランのダンサーが多いので、人間ドラマの深みを追求するような作品にも、今後、期待したい気がした。
(2018年12月2日 大阪狭山市文化会館SAYAKAホール)

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『風の森』鳥:国田美和、牡鹿:山本隆之 撮影:金原優美(テス大阪)

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『風の森』演奏:小馬崎達也、仲林利恵 撮影:金原優美(テス大阪)

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『風の森』撮影:金原優美(テス大阪)

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