アート・スクランブル12『人属のマチエール』

ワールドレポート/大阪・名古屋

唐津 絵理
text by Eri Karatsu

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 舞踊家のこかチちかこが主宰するアート・スクランブル公演の12回公演には、同じくこかチが主宰するオープンセサミのこどもたちが多数参加した。オープンセサミは、障害のある子どもたちのためのダンス教室で、こうした活動を通してこかチは、狭義の芸術としてのダンスから、アートの社会貢献というダンスを社会へとつなげる活動を展開している。
『人属(ヒトゾク)のマチエール』と題した本作品は、プロローグからエピローグまで、進化、群れ、確かな個、群れから生まれる力、芽、新しいヒト、ヒトヒト、ヒトよ、ヒト型、ヒト属、12のパートに分かれ、ヒトの進化の過程を辿っていく。
出演したのは、ダンサーをはじめ、たくさんの障害のある子どもたち。中でも、障害のある子どもたちには大人や現代の子どもでも忘れてしまっている(だろう)原始的な感覚が確かに存在する。
途中でのハプニングだろう、場所を移動しなければならない音楽になっても、リズムにのったまま中央で跳びはね続けている子どもには、天性のリズム感を強く感じたし、身体を通じた自然な魂の発露には、ヒトを意識することなく自然に踊る姿を見つけ、素直に感動を覚えた。

 オペラ歌手の歌や映像、美術など、それぞれは面白く、特にバトンで上から降りてくる沢山の赤い人形たちと子どもたちが一緒に踊る場面は感動的だったが、作品全体としてのまとまりは少し弱かったように感じる。しかし、今回の趣旨からいうと、そんなことはつけたしでしかなかったのだろうし、それでも十分にダンスの力を感じさせてくれる公演だったのだと思う。
(11月23日、名古屋市芸術創造センター)

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