豊田シティバレエ団『シンデレラ』

ワールドレポート/大阪・名古屋

唐津 絵理
text by Eri Karatsu

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 日本でも珍しいNPO法人によるバレエ団が、ウズベキスタン国立ボリショイバレエ団との交流10周年を記念して選んだ作品は、世界中の大人でも子どもでも、誰もが知っている夢物語の『シンデレラ』。

 今回のプロコフィエフによる音楽による初演は、1945年のロシア、振付はザハーロフで、豊田シティバレエ団ではこの版を踏襲し、諏訪等が改訂を加えている。
 豊田、名古屋の2日間の公演、王子をゲストのラトビア国立オペラ座ソリストのセルゲイ・ナイクシンが、シンデレラはダブルキャストで、22日は工藤彩奈(21日は三宅佑佳)が演じた。
全体をとおして第一幕から二幕までのスピーディーな展開が印象的だった。特に第一幕冒頭のシーン、異母姉妹の姉と妹のシンメトリーで機械的な動きが面白い。マイムの中に巧みにユニークな動きを織り込み、新鮮な印象を与えるのに成功している。工藤のシンデレラは、初々しく、かよわい少女そのままだ。彼女の風貌もいでたちも、そしてぎこちなさまでもがシンデレラの役柄にぴったりと合っているように思えた。また、この日、仙女として登場した三宅佑佳が堂々とした演技で、作品全体を引き締めている。

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 王子のセルゲイ・ナイクシンは、端正な風貌ながら、若い頃のルジマトフを彷彿とさせるようなジャンプや回転などでエネルギッシュな踊りを見せた。 コール・ドのダンサーたちも、随所で確実な成長の跡が見られる。一貫した教育システムで、継続的、総合的なレッスンを行うことによって、ダンサーの質は確実に上がっていく、ということをあらためて感じさせてくれる舞台であった。ダンサーたちの今後のさらなる成長を楽しみにしたい。また、福田一雄指揮によるNPO法人小牧市交響楽団の演奏は、舞台をさらに盛り上げることに成功しており、踊りと共にプロコフィエフの音楽を十分に堪能することができた。
(2006年10月22日 愛知県芸術劇場大ホール)

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