ヴェテランのプリマも層厚く活躍する貞松・浜田バレエ団で、若手だとばかり思っていた上山榛名がオデット＆オディールを踊った。観る前は、テクニックのある彼女なので、オディールは素敵だろうと想像し、オデットについては観てみないと分からないな......と思いながら劇場に向かった。観てみて、オディールは想像通りに、やはり伸び伸びとテクニックを活かして。素直な人柄がにじみ出るようなオディールなのだが、それが無邪気に王子を誘惑する怖さにも見えて興味深い。そして、オデットが想像以上に、とても良かった。スローなメロディーの中、たおやかで強い意志を感じさせる凜とした踊り、いつのまにかしっとりとした大人の情感を漂わせるプリマに成長していたのだ。今後の活躍がますます楽しみになる。
そして、ジークフリートは水城卓哉。数々の主役をこなす彼は『白鳥の湖』も、やはり似合う。育ちの良い王子の雰囲気が自然に出て、３幕の喜びいっぱいのヴァリエーションはパも美しく、弾む心が活き活きと伝わってきた。そう言えば、彼は以前、「こうべ全国洋舞コンクール」で受賞した折もこのヴァリエーションを踊っていて、故・薄井憲二先生が講評で彼の左右両方見せるザンレールをとても褒めていらっしゃったのを思い出した。この舞台でもやはり両方披露してくれた。また、このバレエ団の４幕でのオデットとジークフリートのパ・ド・ドゥは、『チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ』のアダージオと同じ曲で踊られるのだが、哀しげにしっとりと響いてとても良い。二人がお互いを大切に想い合っていることが静かに伝わってきて惹きこまれた。
ソリストも充実。１幕のパ・ド・トロワを山口益加、廣岡奈美、塚本士朗と経験豊富なダンサー陣が、そして３幕のパ・ド・カトルは、名村空、山野井萌、弓場亮太、大門智と、コンクール１位受賞に輝いたダンサーなど若手伸び盛りが楽しませてくれた。また、３幕のスペインの中心は竹中優花、オディールと鮮やかに入れ替わりながらのシーンはゾクゾクする仕上がり。
白鳥たちのコール・ド・バレエも、全体でひとつの意志を持つように感じられ、気持ちがひとつになって全幕が創り上げられていることを実感した。
（2018年9月23日　あましんアルカイックホール）