Water drops Company "Relationship"

ワールドレポート/大阪・名古屋

唐津 絵理
text by Eri Karatsu

Water drops Company

 モダン、バレエ、ジャズ、芝居など、様々なフィールドで活動している愛知県の若手ダンサー&パフォーマーたちによるコンテンポラリー・ダンスの公演が開催された。振付は夜久ゆかり、単独公演は初めてであったが、これまでの自身の豊富な活動を反映した充実した舞台となった。
 人と人、物と物、時間・空間・流れがつながりによって生まれてくる関係から発想した全7シーンで構成。シーンごとに、様々なダンサーが出入りし、オムニバス形式で展開する。

 最初の場面「Insider or Outsider」<壁>は、9名のアンサンブルで、各ダンサーが実際に登場する3枚の壁に立ち向かう。壁をこえようとしたり、反発したり、無視したり。壁を挟んで、様々な動きのヴァリエーションを見せることで、現実社会に住む人と人との関係を浮き彫りにしようとした。
 続く「Existence」は、本公演のプロデューサー小林美穂と夜久ゆかりのデュオ。<存在の記憶>というサブタイトルのとおり、2人のダンサーが自身の身体の記憶を丁寧に手繰り寄せようとして生まれた選ばれた動きが連なっている。真摯に身体に立ち向かっている様が心地よい空間を創りだす。
 「Sleepless night」では、場面は一転、アメリカでコンテンポラリーを学んだtomomiと、2人の男性、杉浦紀行とNORIMA。のトリオによる芝居風のステージ。舞台中央に置かれたテーブルの上で動くtomomiは、一瞬ごとに日常的な動きからダンシーな動きへと変貌を繰り返し、眠れる夜を過ごす若者の姿を描き出す。本作の中でも、最も秀逸だと感じた場面だ。

 次の「Strange Fish 」では、外波山三智香、山本祐実、渡邊智美が、水槽を映し出す映像を使用して、刻々と崩れていく人間関係のバランスの妙を表現、その後も場面は次々と展開する。
日本とアメリカと北朝鮮という、現実の国際問題をマイムや滑稽な動きで表した「The trueth under the mask」では、小林、山下恵美、吉田琢巳が、クルト・ヨースの『緑のテーブル』を髣髴とさせたかと思えば、次の「Apple」は、Saiと杉浦による2人が、言葉を多用し、超現実的な些細な日常を演じながらも、普遍的なアダムとイヴをイメージさせた。

 ラストの「デジャヴ」では、これまでの舞台の中の出来事が夢であったのかと思わせるように、たくさんの仕掛けが待っていた。真っ暗な舞台で効果的に見せるスポットでのダンス、懐中電灯を振り回し、光と戯れる人々。
 多様な背景をもつ地元のダンサーたちを素材として、コンテンポラリーでありながら、実験的でありすぎず、普通の人たちにも受け入れられる同時代の舞台を創りたかったという夜久ゆかり。どこかで観たことがあるような場面が少々多かったことが気になるが、個性的なダンサーたちを活かした、コンテンポラリーを初めてみた人が楽しめる作品、という彼女の志は十分に体現できていたと思う。次のステップとしては、ダンサーたちがもっと能動的になり、共に作品を創作しているアーティストとしての意識をもつこと。コンテンポラリーダンスは、同時代の表現。それを踊るダンサーたちの意識が作品創作のもうひとつの鍵を握っているのだ。
(8月12日 愛知県芸術劇場小ホール)

Water drops Company

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