松岡伶子バレエ団付属研究所発表会『ブンナよ、木からおりてこい』

ワールドレポート/大阪・名古屋

唐津 絵理
text by Eri Karatsu

松岡伶子バレエ団の発表会が行われた。このバレエ団の発表会は、発表会といっても、それだけではなく、しっかりと観客に見せることを意識した作品が並んでいる。今年は、日本の民話を題材にした創作バレエで独自の世界を創っている松岡伶子による『ブンナよ、木からおりてこい』(初演:昭和58年)が久しぶりに上演された。

第1部では、幼児から中学生ぐらいまでの生徒のための、様々な作品が並ぶ。その後のバレエ・コンサートでは、ジュニア・バレリーナによる『眠れる森の美女』。沢山の将来のバレリーナの卵たちが、パ・ド・シスからはじまるプロローグから、第3幕までを若さいっぱい華やかに上演した。豊富なダンサーの人数や配役に応じて振付や構成も上手にアレンジされていて、初々しい古典作品を観ることができた。『ブンナよ、木からおりてこい』は、日本の物語を題材にした松岡伶子による振付作品。ジュニアによる作品であるが、藤掛廣幸による音楽、三木健による台本と、決して子供の作品だと軽視できない秀逸な創作バレエに仕上がっている。

かえる役の全身真緑の総タイツをきた八十名を越すジュニアダンサーが、大ホールの舞台狭しと並ぶ姿は圧巻。小さくても堂々とした振る舞いで、顔の角度から手先足先まで完璧に揃った群舞の振付は、練習の賜物であろう。物語は、ときおり流れるナレーションに導かれるように進行していく。こどもたちに、弱肉強食の自然の厳しい世界を演じ、作品を理解する力を養ってほしいとの松岡のまなざしに支えられた作品である。

日本の伝統に基づいたテーマで、日本人振付家による独自の作品を踊っていくことの素晴らしさを感じたと共に、沢山のバレエ団が、同じような古典作品を上演している中で、このようにバレエ団としてのオリジナルティを打ち出していくことの必要性をあらためて感じた公演であった。
(名古屋市民会館大ホール・4月16日)

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