"チューダーや貞松作品を上演した<ラ・プリマヴェラ>

ワールドレポート/大阪・名古屋

すずな あつこ
text by Atsuko Suzuna

貞松浜田バレエ団の<ラ・プリマヴェラ>

 2年に一度開催され、今回6回目を迎える貞松浜田バレエ団の<ラ・プリマヴェラ>。いろいろなグラン・パ・ド・ドゥなどが楽しめるガラ・コンサートなのだが、ひとつのバレエ団に多くの、個性や魅力を持った実力派ダンサーがいることにまず驚く。どの作品もそれぞれ印象に残っているが、その中で珍しいものを中心に数点あげてみる。

 まずパリ・オペラ座バレエ団初演の『ラ・ペリ』より「ペリとアクメ」。安原梨乃と貞松正一郎が踊った。妖精ペリの安原は本当にチャーミング。快楽に飽き足らない詩人アクメの悩める表情も自然で好感が持てた。
 そしてアントニー・チューダーの『コンティヌオ』。アメリカからドナルド・マーラーを指導に迎えてのバレエ団初演である。聴き慣れた音楽、パッヘルベルのカノンにのせての叙情的でなめらかな流れの小品だった。上村未香と武藤天華、竹中優花と川村康二、吉田朱里とアンドリュー・エルフィンストンという3組のレベルの高いカップルの素直な動きが心地よい。やわらかく優しいものに仕上がっていた。

up02.jpg

up03.jpg

貞松浜田バレエ団の<ラ・プリマヴェラ>

 他にも、高いテクニックを持っていることが分かる廣岡奈美と恵谷彰の『ディアナとアクティオン』。本当に蝶が飛んでいるのが見えるかのような正木志保と桑田充の『ラ・シルフィード』より「シルフィードとジェイムズ」。日本人ダンサーは踊ることが少ない『スパルタクス』から「フリギアとスパルタクス」のパ・ド・ドゥを踊った吉田朱里と山口章は、叙情に満ちながらもアクロバティックな動きに果敢に挑戦していた。物語の中にすっかり入ってしまったような、この世のものではない雰囲気を体現してくれた瀬島五月とアンドリュー・エルフィンストンの『ジゼル』第2幕より「ジゼルとアルブレヒト」も良かった。

 最後は貞松正一郎振付の、G・ガーシュウィンの曲にのせた『アイ・ガット・リズム』。アメリカ的な明るい雰囲気の数十分の作品。全員で華やかに楽しくコンサートの最後を飾ってくれた。
 全体を通して、上村未香&貞松正一郎、瀬島五月&アンドリュー・エルフィンストン、武用宜子&川村康二といったバレエ団内のダンサー同士の夫婦によるパ・ド・ドゥ(『アイ・ガット・リズム』内を含めて)をいくつも観ることが出来たのも印象的。結婚しても2人ともがいきいきとバレエ団活動をする姿は、とても素敵に思えた。
(3月25日 神戸文化中ホール)

up05.jpg

up06.jpg

貞松浜田バレエ団の<ラ・プリマヴェラ>

ページの先頭へ戻る