後藤田恭子バレエスタジオ公演2006
- ワールドレポート
- 大阪・名古屋
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ワールドレポート/大阪・名古屋
- 唐津 絵理
- text by Eri Karatsu
愛知県の東方、小牧市および江南市を拠点に活動している後藤田恭子による第2回のスタジオ公演が、初めて名古屋市内で開催された。演目は『レ・シルフィード』と『White Whispering』、古典と創作のバランスのよい2作品の上演となった。本公演の目玉は、新国立劇場バレエ団で活躍中の、愛知出身の舞踊家・市川透が振付した創作作品『White Whispering』。日本のバレエ界では、振付に挑戦する舞踊家が少ないなか、新国立バレエ団に籍をおきながらも、果敢に創作活動にも取り組む市川の作品を観ることのできる稀有な機会であったからだ。
『White Whispering』の初演は2003年であるが、市川は、チャイコフスキーの『くるみ割り人形』の音楽を使用しながらも、時代を現代に置き換え、今に生きるひとりの少女を通して、人の心の根底にあるものを表現したという。現代的な衣裳、ロック調にアレンジされた音楽(音楽も市川のプロデュース)や、回想シーンで挿入されるビデオ映像など、様々な手法で舞台を構成。少し要素が多すぎて、整理できないまま混在していた部分もあるように感じたが、今回取り組んだ成果は十分にあった。後藤田恭子バレエスタジオの生徒たちも、難しい振付に正面から取り組み、よく頑張っていたと思う。
作品をとおして、ストーリーを現代にした場合に陥りがちな空々しさはなく、リアリティのある物語になっていたのは、奇しくもこのストーリーの原点が、市川自身の体験した生死との闘いにあるからだと思う。実感の伴った物語は、人々の心に何かを残す、ということを強く感じた舞台でもあった。新国立劇場での国際的な振付家たちとの共同制作の経験を生かして、さらに深い創作への扉を開け続けて欲しいと思う。
(2006年1月29日 愛知県勤労会館)