安積瑠璃子が初めての主役に挑戦、バレエ芸術劇場『くるみ割り人形』

ワールドレポート/大阪・名古屋

すずな あつこ
text by Atsuko Suzuna

バレエ芸術劇場『くるみ割り人形』

 33回目を迎えるバレエ協会関西支部主催のバレエ芸術劇場。この芸術劇場で『くるみ割り人形』は、初期の頃には何度か上演されているが、ロシアとの共同企画が始まってからは今回が初めて。サンクトペテルブルクのワガノワ・バレエ・アカデミーから、ワイノーネン版に詳しいワジム・シローチンを振付に招いての上演された。王子役には、昨年の『眠りの森の美女』も好評だったキーロフ劇場プリンシパルのアンドリアン・ファジェーエフ。マーシャは、21日が安積瑠璃子、22日は楠本理江香、1幕のパーティシーンからネズミとの戦いのシーンまでを踊る子役のマーシャに、21日は山下摩耶、22日は内藤夕紀、フリッツは岸本恭平。私は21日の方を鑑賞した。

 1幕で特に印象的だったのは、まず子役のマーシャ、山下摩耶のアントルラセの後の脚が高くて美しいこと。それにお爺さん(岡村建治)とお婆さん(宮田満寿美)役で、杖を持った足の悪いお爺さんが、クリスマスパーティが楽しくて無理して踊りだす様子が、とても優しく楽しく表現されていてほほえましかった。ドロッセルマイヤー(山口章)は、怪しいというよりは、面白くてやさしいおじさんという感じでこれも良い。

バレエ芸術劇場『くるみ割り人形』

バレエ芸術劇場『くるみ割り人形』

バレエ芸術劇場『くるみ割り人形』

バレエ芸術劇場『くるみ割り人形』

 王子の変身と共に、マーシャも山下摩耶から安積瑠璃子に。ファジェーエフはさすがにスタイルが美しく、技術も確か。共に踊る安積も初主役とは思えないほど堂々としていたが、、若いからこその可愛らしさも時折のぞかせて魅力的だった。

 お菓子の国のディヴェルティスマンもそれぞれキャラクターに合ったキャスティングで、どれもよかった。特に印象に残っているのは前田奈美甫のチャーミングな中国の踊り。芦笛はワガノワ・バレエ・アカデミー公演などでよく観る女の子2人に男の子1人のパ・ド・トロワ。杉内里穂、藤井美保子、松出直也の3人は、きちんと踊るジュニアで将来が楽しみ。欲を言わせていただけるなら、少し気になったのは、ディヴェルティスマンの踊り手が、自分の踊りではない時に周囲で座っている状態の演出。あまりにもきっちりとポーズを取り過ぎていて、もう少し自然な状態に演出しても良かったのではないかと感じた。


 ラストのグラン・パ・ド・ドゥ、ふたりとも共通して美しくのびやか。ファジェーエフのバッチュはお手本そのものという感じで、安積もテクニックがあるので安心して観ることが出来る。まだ若い彼女、経験を積み重ねることで、これからどんどん成長していくことだろう。
(1月21日、大阪国際会議場)

バレエ芸術劇場『くるみ割り人形』

バレエ芸術劇場『くるみ割り人形』

バレエ芸術劇場『くるみ割り人形』

ページの先頭へ戻る