後藤千花ステップ・ワークスバレエが受賞記念公演で2作品を上演
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ワールドレポート/大阪・名古屋
- 唐津 絵理
- text by Eri Karatsu
ステップ・ワークスバレエが、平成16年名古屋市芸術奨励賞を受賞した記念公演が開催された。常に古典と創作の両面から取り組んできた後藤千花が、この記念公演に選んだのは、平成13年度名古屋市民芸術祭受賞作の『智恵子~わが愛』と新作『パリの喜び』の2作品だ。
『智恵子~わが愛』は、このバレエ団に作品を提供し続けている上田遥の振付。古典のテクニックを大きくはみ出すことはなく、その中でダンサーを生かす振付に定評がある上田は、後藤のダンサーとしての資質を開花させた振付家なのだろう。
高村光太郎の詩集「レモン哀歌」に歌われた光太郎の智恵子への大人の愛が、「レモン色の悲しみ」からラストの「永遠の愛」までの7つのシーンにそって、光太郎と智恵子役の原田公司と後藤千花によって耽々と表現された。心象を照らしだすような御原祥子の照明が効果的で、黒子によって回転させられたパネル型の鏡に映った自分の姿を、死の予感を伴いながら、そこはかとなく見つめる智恵子の姿が印象的であった。
続く『パリの喜び』は、児玉克洋の振付。ジャック・オッフェンバックの『ホフマン物語』などの喜歌劇数曲から、ロザンタールが抜粋・編曲したバレエ音楽に基づいたオペレッタ風バレエ。陽気な酒場、子供や大人が集まる広場を舞台に様々なダンスが繰り広げられる。ヴァラエティ豊かな音楽ばかり、ワルツやマーチ、カンカンなどがずらりと並んで、聴いても踊っても、楽しめるステージだ。誰もが知った「天国と地獄」の曲がかかると、これぞ、フレンチ・カンカンと、舞台狭しと踊りまわるダンサーたち。ミュージカルやオペレッタの妖艶な踊り子たちと趣も異なり、バレリーナによるカンカンは手足の長い現代っ子たちをよく活かした振付で、舞台を大いに盛り上げ、観客も立ち上がって踊りたくなるような楽しい舞台に仕上がっていた。
(11月26日、名古屋市芸術創造センター)