佐々智恵子バレエ団がバレエ・リュスの名作『レ・シルフィード』 『プルチネラ』

ワールドレポート/大阪・名古屋

唐津 絵理
text by Eri Karatsu

佐々智恵子バレエ団『レ・シルフィード』

 小牧正英に学んだ佐々智恵子が昭和24年に創設して以来、長い歴史をもつ愛知を代表する佐々智恵子バレエ団が、バレエ・リュスの名作2作品に取り組んだ。
 バレエ団の中心的な存在だった佐々良子氏の他界から1年。こういったときこそ、バレエ団が一丸となって作品に取り組まなければならない、という団員たちの強い結束力を感じる気合に満ちた公演であった。

 まず、最初の『レ・シルフィード』は、関直人の振付。詩人とシルフィードという配役こそあるものの、具体的なストーリーはないということで、抽象バレエの先駆けとなった作品である。詩人を踊ったゲストのエンバー・ウィリスは、詩人らしい端正な雰囲気で、作品のもつしっとりとした情緒を醸し出した。プリマの小川典子や若手の宮原あゆみらも作品への真摯な取り組みを感じさせるまとまり感のあるシルフィードであった。

佐々智恵子バレエ団『レ・シルフィード』

佐々智恵子バレエ団 『プルチネラ』

佐々智恵子バレエ団 『プルチネラ』

 続く『プルチネラ』は、同じくバレエ・リュスの作品として、1920年にレオニード・マシーンの振付、ストラヴィンスキーの音楽、ピカソの美術によって上演された大変豪華なアーティストたちの共同制作作品。バレエ・リュスの作品中でも日本ではあまり上演されることのない作品であり、さらにバレエ団の神戸珠利が大作の振付に挑むということで、楽しみにしていたが、期待以上の出来であったと思う。

佐々智恵子バレエ団 『プルチネラ』

『プルチネラ』は、女性に人気のある色男のプルチネラとその恋人、プルチネラをうらやむ男性、そして彼らに恋する女性たちの恋を題材にした、イタリアのコメディア・デラルテから発想を得たコメディ・バレエである。幕があがると、下手にはオレンジ色の布で製作された舞台装置、上手には、緑や茶の木々たちが点々とそびえて立つ。抽象絵画のようなシンプルな曲線や直線で表現された舞台装置は、バレエ・リュスの世界を蘇らせるかのごとく、効果的である。そこにピンクとブルーなど色彩豊かな衣裳をきたダンサーが登場して、可愛い女、怒る女、など様々な男女を演じながらドタバタ劇を繰り広げていく。バレエの原語に沿いながらも、諸所でユニークな動きを取り入れ、ストラヴィンスキーの音楽にぴったりと寄り添った振付が心地よい。彼の難解な音楽が、より自然にそして楽しく感じられる新作は、神戸の振付家としての本格的なデビューとも言えるものであろう。ダンサーに比べて振付家の少ない日本のダンス界の現状のなか、今後の神戸の振付活動に期待していきたいと思わせる作品であった。
(12月3日、名古屋市民会館大ホール)

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