20回目を迎えたMRBバレエスーパーガラは、ベテランから若手までの実力派ダンサーが集った

ワールドレポート/大阪

すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna

松田敏子リラクゼーションバレエ

「MRBバレエスーパーガラ」漆原宏樹;芸術監督、松田敏子;演出・企画製作・プロデュース

毎年夏に行われて20年、20回の節目を迎えた「MRBバレエスーパーガラ」。関西で行われるバレエガラで、これだけ途切れなく続いているのは、今、このガラくらいなのではないだろうか。私自身、バレエの原稿を雑誌に書き始めた頃に第1回を観て以来、数度、観られなかった年もあったものの、ほぼ毎年、このガラを楽しみにしてきた。いつも日本はもちろん、世界で活躍するダンサーが集って、お祭りのようなガラだけれど、今回はさらに賑やか。節目ということで、守山俊吾指揮、テアトロ・バレエ大阪によるオーケストラ生演奏で華やかに開催された。
全26演目もあったので、全部は紹介できないけれど、特に印象に残ったものについて触れたい。
幕開けは漆原宏樹振付『ディベルティメント』。藤本瑞紀と水城卓哉を中心に、オープニングらしく華やかに。藤本と水城は、これまで別々の舞台で観て、それぞれ良いダンサーだなと思っていたのだが、この2人、どちらも優しい喜びが感じられて雰囲気が合うな、と思う。こんな発見もガラだからこそだろう。いくつか上演されたヴァリエーションは、内外のコンクールで好成績をあげたり、すでに海外で活躍しているなどの若手たちで、フレッシュな魅力を楽しんだ。主催者の松田敏子は『海賊』第2幕よりパ・ド・トロワを、コンラッドは沖潮隆之、アリは西川啓輔で踊った。MRBのマークにもなっているリフトで美しく反るポーズを見せて大きな拍手を受けた。メドーラを踊った彼女の踊りが、昔より穏やかな雰囲気をまとっているのも良かった。

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『海賊』第2幕よりパ・ド・トロワ メドーラ:松田敏子、コンラッド:沖潮隆之
撮影:尾鼻文雄(OfficeObana)(すべて)

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『アンナ・カレーニナ』よりアンナのヴァリエーション 奥野凜
撮影:尾鼻文雄(OfficeObana)(すべて)

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『タチアナとエフゲニー』楠本理江香、青木崇

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『白夜』竹中優花、武藤天華

第2部の幕開けで踊られた楠本理江香と青木崇による漆原宏樹振付『タチアナとエフゲニー』も心に残った。沼光絵理佳のピアノソロに載せ、成熟した女性だからこその深い葛藤、その上での毅然とした態度を好演した楠本、青木が自然にそれに呼応した演技を見せるのも良い。竹中優華と武藤天華が、素我螺部振付『白夜』を北浦洋子のヴァイオリンにのせて踊ったのも印象的。美男美女の2人が、コミカル+ヘン系(?)の動きに全力で。客席からは良い笑いが起こっていた。白石あゆ美と岩田守弘の『シェヘラザード』は、白石の大人の女性の強さを持ったゾベイダ、ベテランながら若い奴隷に見える岩田、どちらも経験を重ねたダンサーだからこその表現力だろう。

ロシア、タタールスタン歌劇場バレエ団で活躍し、昨年のモスクワ国際コンクール受賞でも話題になった寺田翠と大川航矢の『ラ・フィーユ・マル・ガルデ』よりグラン・パ・ド・ドゥもさすが。ロシアの美しいラインに、高いテクニックがあるからこその軽さと速さのある動き。表情もいきいきチャーミングで素晴らしかった。法村珠里がオーロラ姫を踊った『眠れる森の美女』よりローズアダジオは、なんと、王子が8人。しかも同窓会のようなベテラン含む、沖潮隆之、梶原将仁、小嶋直也、左右木健一、寺田宜弘、法村圭緒、武藤天華、山本庸督。こんなことが出来るのもガラだからこそのような気がする。

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『シェヘラザード』よりパ・ド・ドゥ
白石あゆ美、岩田守弘

そして、最後の第三部はさらにお祭り的。スペシャルプログラム『ドン・キホーテ』よりなのだが、キトリを久保茉莉恵、瀬島五月、大矢夏奈と踊り分け、バジルも待山貴俊、法村圭緒、梶原将仁、清瀧千晴、大川航矢と複数で。エスパーダは小嶋直也で若手実力派のトレアドールたちを率いて。全幕をコンパクトにした形だったが、3幕のキトリのヴァリエーション踊った大矢は5回くらい回ったような達者なトゥール、コーダでもトリプルを多く入れたフェッテ・アントゥールナンと、記念の年のガラらしく楽しませてくれた。
これからの10年、20年、さらに楽しみにしたい。
(2018年8月5日 グランキューブ大阪)

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『眠れる森の美女』よりローズアダジオ オーロラ姫:法村珠里、王子たち:沖潮隆之、梶原将仁、小嶋直也、左右木健一、寺田宜弘、法村圭緒、武藤天華、山本庸督

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『ドン・キホーテ』エスパーダ:小嶋直也

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