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130年前にパリ・オペラ座で上演された『ル・レーブ』を復活、オニールとパケットが踊った

ワールドレポート/京都

関口 紘一 Text by Koichi Sekiguchi

京都バレエ団「京都・パリ友情盟約締結60周年記念公演 トリプルビル」

『ル・レーヴ』ファブリス・ブルジョワ:構成・演出・振付、『パキータ』第2幕より ピエール・ラコット:復元振付、『ラ・バヤデール』第2幕より ファブリス・ブルジョワ:構成・演出・振付

『ル・レーヴ(夢)』は1890年にパリ・オペラ座で上演された日本に題材をとったバレエ(ヨセフ・ハンセン振付、レオン・ガスティヌル音楽)で、これをオペラ座のメートル・ド・バレエのファブリス・ブルジョワが新たに構成・演出・振付けたもの。音楽はオペラ座のピアニスト、ミッシェル・ディエットランがガスティヌルの原曲を基に編・作曲し、演奏した。19世紀に世界的に流行したジャポニズムなどの影響により上演された、日本を題材としたバレエに深い関心を抱いていて、昨年、惜しまれつつ亡くなられた薄井憲二氏の発案により、復活上演が実現した。薄井氏の熱意に押されるようにブルジョワが、オペラ座の図書室を調査すると、800ページにも及ぶ手書きの楽譜とともに美術などに関する様々な資料が、130年間誰の手に触れた様子もなく埃にまみれて見つかった。ただ、振付に関する資料だけは何もなかった、という。そしてブルジョワとディエットランは「プティパとチャイコフスキーの仕事を再現しているような」作業の末、なんとか復活上演に漕ぎつけることができた、という。

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京都バレエ団「ル・レーヴ」オニール 八菜(ダイタ)、カール・パケット(タイコ) 撮影(すべて)/瀬戸秀美

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幕開きでは少し驚いた。19世紀末のフランス人が空想した「日本」が、現実の日本人の手によってリアルに表されていたから。赤いもうせんが敷かれ、野だてに使われる赤い傘が設えられ、茶店がある。歌舞伎の一場のよう。初演時のポスターや当時の雑誌に掲載されたイラストレーションを始め、多くのヴィジュアルが残されていたので、それらを複合して再現している部分と、新な振付に適合させているところがあったからだろう。

主人公のタイタはオニール 八菜。赤い着物の形を生かした衣装にポアントを履いているのだが、一際細身に見える。さすが、オペラ座のプルミエールダンスーズはどんな衣装も見事に着こなしてしまうのだろうか、それとも日本人のDNAが密かに現れているのだろうか。
村の広場で、当時の日本の人々が様々な風俗を繰り広げるなか、ダイタは婚約者のタイコ(カール・パケット)と踊る。しかしじつは、ダイタは身分の高い領主のサクマ(鷲尾佳凛)に憧れていて、彼らが通りかかると気もそぞろ。タイコはそんな彼女が心配でならない。やがてお祭りで村中が浮かれている時、領主がダイタを気に入り親しくするようになる・・・。そしてダイタはいつの間にか眠りに落ちる。

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オニール 八菜、鷲尾佳凛(サクマ)

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イザナミ( 藤川雅子)

するとイザナミ(藤川雅子)が、扇状に放射する虹色の光りの中からお付きの女神たちを連れて現れる。イザナミ━弁天様を想起させる━はダイタに夢を与えたのだ。そこでダイタは憧れていた領主サクマに乱暴されそうになる。その時、タイコが現れて窮地を救ってくれるのだが、彼は領主の放った矢に射たれて死んでしまう・・・。あまりの悲しさに目を覚ましたダイタを、タイコが優しく迎えてくれた。
ダイタは領主の妃となり、多く召し使いたちにかしずかれて暮らす夢を想い描ていた。そのためにタイコの愛が彼女にとって得難い貴重なものだとは気付くことが出来なかったのである。
女神が計らいによる夢が、現実的世界では理解出来ない精神的な世界に啓示して、ダイタは始めてタイコのかけがえのない愛を感じることができた。
そしてラストでは、オニール 八菜とカール・パケットの心のこもったパ・ド・ドゥが踊られた。このシーンはあまり長いものではなかったが、二人の気持ちが客席にしっかりと伝わるオペラ座のダンサーらしい素敵な踊りだった。
およそ130年前のバレエが復活される様々なドラマを知り、そのバレエが描く「日本」を体験するという得難い体験をさせてもらった。これもまた、バレエという舞台芸術だからこそ可能なことと言えるのではないだろうか。

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第1部では『パキータ』第2幕より、舞踏会のシーン(ピエール・ラコット復元振付)。パキータ(北野優香)リュシアン(鷲尾佳凛)、そしてパ・ド・トロは荒井玲那、中村理寿、アントワーヌ・キルシェ(パリ・オペラ座バレエ、コリフェ)が元気な踊りを見せた。

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「パキータ」撮影/瀬戸秀美

最後の第3部は、『ラ・バヤデール』第2幕婚約祝宴のシーン。ガムザッティ(オニール 八菜)、ソロル(カール・パッケット)、ラジャ(陳秀介)というキャストだった。オニールとパケットの豪華な雰囲気のある踊りが最後を締めくくった。
まさに京都・パリ友情盟約締結60周年を記念するのにふさわしいトリプルビルだった。
(2018年7月27日 ロームシアター京都 メインホール)

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「ラ・バヤデール」オニール 八菜、カール・パケット 撮影/瀬戸秀美

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