新しい世代のダンサーたちも挑戦した松岡伶子バレエ団『白鳥の湖』
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ワールドレポート/大阪・名古屋
- 唐津 絵理
- text by Eri Karatsu
振付:ナターリャ・ボリシャコーワ『白鳥の湖』
松岡伶子バレエ団
松岡伶子バレエ団の『白鳥の湖』が6年ぶりに上演された。今回は主役も大きく代替わり。2日公演の初日はオデットとオディール役は日替わりで同バレエ団の若手が主役デビューを飾り、2日目はすでにバレエ団の看板・伊藤優花と王子は碓氷悠太の登場となった。
私は初日を観賞。オデットは佐々部佳代、オディールは早矢仕友香、この日の王子役は地主薫バレエ団のホープの奥村康祐がゲスト出演し、ダンスノーブルという評判に違わぬ気品高き王子ぶりを披露した
『白鳥の湖』の見所のひとつとして、優雅なオデットと王子を惑わすオディールの対比があるだろう。主役デビューとなった若手2人の演技は、芸術監督・松岡伶子の「素顔とは異なる役を当てた」との、配役の妙に応えるものであった。
ジャクソンなどの国内外のコンクールで多くの受賞歴をもつ佐々部は、松岡バレエ団のコール・ドやソリストなどで十分な経験を積むことによって、初主役でありながらも、丁寧かつ繊細さをもつ洗練されたオデットを演じるに至っている。3幕では主役の重圧から解き放たれ、1幕よりさらに伸び伸びとした踊りで会場を魅了。対する早矢仕はバレエ団のソリストとして団を支えてきた存在でもある。オデットの強さと魅惑的なキャラクターを十分なテクニックに裏打ちされた濃密な踊りで表現した。
松岡伶子バレエ団の層の厚さを証明するのが、第1幕や2幕のコール・ド・バレエとソリストの活躍する3幕。
特に3幕の舞踏会のシーンでは、ベテラン大脇衣里子、岡部舞、大寺資二、高宮直秀の踊るスペイン、木村麻実と窪田弘樹のナポリターナ、松本千明、青木崇演じるチャルダッシュ、そしてマズルカやルスカヤ、いずれの舞もエネルギッシュかつ美しく、舞踊の原始的なパワーと形式美という舞踊芸術本来の魅力を十分に感じることができた。
作品を通して、道化を演じた中弥智博、ロットバルトのアンドレイ・クードリャが抜群の存在感をみせ、全体の流れにスパイスの役割を果たした。また主役に限らず、山下実可や津田知沙など、若手の成長を感じられる場面も多く、バレエ団の今後にも期待を抱かせた。これまでのバレエ団の十分な蓄積によるキーロフバレエ版の古典作品上演という意義に加え、未来への展望をも予感させる『白鳥の湖』であった。演奏は、竹本泰蔵指揮による中部フィルハーモニー交響楽団。
(2010年12月18日 愛知県芸術劇場大ホール)
バレエ・マスター:ワジム・グリャーエフ
オデット:佐々部佳代(18日) 伊藤優花(19日)
オディール:早矢仕友香(18日) 伊藤優花(19日)
王子:奥村康祐(18日) 碓氷悠太(19日)
撮影:むらはし和明