関西のコンテンポラリーダンスの先駆、ヤザキタケシの3作品

ワールドレポート/大阪・名古屋

すずな あつこ
text by Atsuko Suzuna

演出・振付:ヤザキタケシ

DANCE BOX

関西のコンテンポラリーダンスの先駆、ヤザキタケシの初期の作品2つと新作1つを組み合わせた公演が行われた。
どれもソロ作品で、興味深いのは、A、B、C、3つのプログラムが用意され、AとBでは、若いダンサーが作品を踊り分けたこと。イム・ジョンミ、下村唯、佐藤健大郎、森山未來、西岡樹里が出演した。
だが、私が観たのはCプログラム、ヤザキが3作品とも踊ったものだ。合計1時間あまりを、少々の暗転のみで休憩もなく、たった1人で踊りきるということだけでも少々驚いた。最初の作品は『スペース4.5(レッドトリッパー)』、1999年に初演された作品だ。赤い長袖シャツに茶色のズボン、赤い靴下のヤザキが、自らの体の可動範囲を確認するように床に寝ころび目安を決めて、正方形のスペースを白いテープで区切る。その限られた場所を使ってのダンス。メリハリを持って動ける身体を持ったダンサーであることを感じた。
続いては、もっとも古い作品で1995年初演の『不条理の天使』。イスがひとつ置かれた舞台、派手目のストライプ柄のスーツ姿でアメリカ的なエンターティメント性溢れるショーが展開される。ヤザキの表情はコメディアンそのもの、テンポも良くて引き込まれる。けれど、この作品はそれだけではない──死生観が現れた作品なのだ。ラスト、笑ってイスの上に立ち、首つりの縄に首をかける。すごく明るい首つり、笑顔・・・ものすごく衝撃的だった。これを観て私は、カフカの『断食芸人』を思い出した。人前で芸をする人間、芸をしようとする人間は、大なり小なりそんな面を持っているのかもしれない。
最後は今年の新作で『ミューザー(沈思者)』。下手前にあぐらをかいたヤザキが、色んな音をつぶやくところから。言葉ではない、擬音だったり動物のように吠えたり、お経のようだったり......。そして、それと組み合わせたダンス。不思議なおかしみがあって、小さな子供がキャッキャッと笑っていた。"ダンス"というジャンルでしか、創り上げられない世界だ。表現力を持った、センスの良い振付家であることを実感した。
(2010年12月5日 新長田・Art Theater dB)

『不条理の天使』ヤザキタケシ 撮影:阿部綾子

『スペース4.5(レッドトリッパー』ヤザキタケシ 撮影:阿部綾子

『不条理の天使』 撮影:阿部綾子

『ミューザー(沈思者)』ヤザキタケシ 撮影:阿部綾子

『ミューザー(沈思者)』 撮影:阿部綾子

撮影:阿部綾子

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