繊細な表現をみせた康村和恵の金平糖の精
- ワールドレポート
- 大阪・名古屋
掲載
ワールドレポート/大阪・名古屋
- すずな あつこ
- text by Atsuko Suzuna
演出・振付:原田高博
主催:バレエスタジオミューズ
今年のバレエスタジオミューズの『くるみ割り人形』、金平糖は康村和恵、この団体で育ったダンサーが里帰りしての出演だ。王子役の佐々木大も、オープンスタジオとしてのこのスタジオでよくレッスンしていたと聞く。その他、現在、このスタジオに集うダンサーたちと、同じ主催者が指導するソウダバレエスクールの生徒たちが出演しての楽しい舞台だった。
プロローグ、雪合戦をする子供たちの前に、若いカップルとして康村和恵と佐々木大が登場し、その後の物語を暗示する。1幕があいて、クララは酒井那奈。トゥ・シューズをプレゼントされての楽しげな踊りが可愛らしい。パーティのなかでは、おばあさんが居眠りをしていたり、おじいさんが子供に悪戯されたりと、細かい工夫も多彩で飽きさせない演出。
1幕で心に残ったのは雪のシーン、雪の女王(田中ルリ)と王子(佐々木大)を中心に踊られたのだが、田中ルリの美しい甲でのパンシェ、ポーズのしなやかさ、大人の憂いに魅せられた。
2幕は、4人の王子と踊る金平糖、康村の少女のような華奢さにまず引き込まれる。ディヴェルティスマンもそれぞれ良かったが、やはり特に金平糖のグラン・パ・ド・ドゥ。舞台に現れただけでキラキラと輝くような金平糖の精、ダイナミックなテクニックを魅せた王子。特に良かったのは、金平糖のヴァリエーションのあの音楽は、不安定な少女の魅力を表しているように感じられるのだが、康村の金平糖には、その曲に合う危うさを持ちながら香りたつものが感じられて繊細で素晴らしかった。
(2010年12月12日 尼崎・アルカイックホール)
撮影:近藤幸博(イングルウッド)