『ドン・キホーテ』から『宮城昇賛歌』まで生徒も楽しんだ宮城昇還暦祝いコンサート
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- 大阪・名古屋
掲載
ワールドレポート/大阪・名古屋
- すずな あつこ
- text by Atsuko Suzuna
芸術監督:薄井憲二、演出・振付:宮城昇、宮城美佐子
宮城昇バレエスタジオ
世界レベルのダンサーを多く育ててきた宮城昇。2005年にファイナルコンサートを開き、もう舞台は最後としていたが、今年の2月23日に還暦を迎えたことをきっかけに、生徒たちがお祝いをしたいということになり、開かれたのが今回の舞台だそう。プログラムに「すみません今回は洒落です!(笑)楽しんでください」とあるのが、この先生の人柄を表しているようで微笑ましい。海外で活躍中のダンサーたちもバカンスシーズンの夏ということで加わり、宮城の教え子たちの気持ちのこもったコンサートとなった。
幕開けは『ドン・キホーテ』より。グラン・パ・ド・ドゥのなかに友人のヴァリエーションだけでなく、キューピッドや森の女王、ドルシネア姫などのヴァリエーションを織り込んでの上演。キトリを踊った下司智子はスラッとしたバレリーナらしいスタイルの持ち主、強さを感じさせキトリというキャラクターに合っている。バジルの末松大輔はまっすぐなトゥールはじめ、高いテクニックの数々が決まって気持ちの良い踊り。ドルシネア姫のヴァリエーションは、フランス留学で学んだことを観せてくれた奥野凜。やわらかい輝きを持った踊り、香りたつような魅力が良い。
その後、さまざまなヴァリエーションやグラン・パ・ド・ドゥが上演された。『ラ・シルフィード』よりジェームズのヴァリエーションを踊った上村輝は、アントルシャの脚もアチュチュードの形もとても良い、のびやかさも持って魅力的。『胡桃割り人形』第2幕より金平糖のヴァリエーションを踊った川東まりこは、夢のなかで美しく輝くお姫様そのもの、技術もしっかりしている。彼女は黒鳥のグラン・パ・ド・ドゥも踊ったが、内面表現が深まれば、またもう一歩進めるのではないかと感じる。
『海賊』よりグラン・パ・ド・ドゥを踊った四柳育子は、のびやかで素直な踊り、そのパートナー川村海生命がまた特に眼を引いた。手脚が長く、ゴムのような柔らかな筋肉を持つように見え、これからが楽しみなダンサー。『サタネラ』も、藤光香苗未、上嶋啓悟、男女ともに良い。男性はニコニコと少年のような可愛らしさを持ちながら、軸足飛びながらのアラセゴン・トゥールなど高いテクニックにも挑戦。伸び盛りの良い男性ダンサーがレッスン場で競い合うことで、更によくなっているのではないか・・・とそんな気がした。
最後は『ガチョーク賛歌』をアレンジした『宮城昇賛歌』。フィナーレには宮城昇自身も登場し、生徒たちとともにユニークでコミカルなダンスをとても楽しげに踊った。それも観ていて楽しくなるものだった。
(2010年8月10日 京都市呉竹文化センター)
写真:(C) 宮城文江