『ガーシュイン・モナムール』を踊った将来が楽しみなダンサーたち
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- 大阪・名古屋
掲載
ワールドレポート/大阪・名古屋
- すずな あつこ
- text by Atsuko Suzuna
演出・振付:波多野澄子、深川秀夫
波多野澄子バレエ研究所
今夏の波多野澄子バレエ研究所の舞台、まず印象に残った1つは、井上勇一郎が自ら振付、踊った『Attain』。このタイトルを日本語に訳すと"達成する"、どうしようもない苦悩も感じさせ努力を重ねる姿が、コントロールされた身体で、ゆるやかな動きを伴って表現されていた。"達成"を目指してのもがきだろうか。それとも"達成"したがゆえの苦悩だろうか。
『クララの夢〜くるみ割り人形より〜』の中心、クララを踊った田中伶奈は素直でのびやか、これからが楽しみだ。
ラストは深川秀夫振付の『ガーシュイン・モナムール』。森の中のシルフィードのような妖精のシーンで幕を開け、白い衣装を脱ぎ捨てカラフルな短い衣装で、パ・ド・ドゥやソロなど、さまざまな踊りが繰り広げられる。ここのダンサーたちは深川秀夫作品に何度も取り組んでるからだろうか、香り立つような深川作品独特ののヨーロッパ的なおしゃれさと可愛らしいコミカルさといったものをよく表現する。なかでも今回、主要な役割を果たしたのは、森充生とパ・ド・ドゥを踊った藤井真理子と、大寺資二とパ・ド・ドゥを踊った辻未来。大人の表現力も観せるなど、これから主役を踊る機会が増えそうなダンサーとしてのさらなる成長が楽しみな2人だ。
(2010年8月8日 神戸文化ホール大ホール)
撮影:古都栄二/中原健吉(テス大阪)