大久保彩香と青木崇が踊った isバレエ、泉ポールの『ジゼル』
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掲載
ワールドレポート/大阪・名古屋
- すずな あつこ
- text by Atsuko Suzuna
改訂振付:泉ポール:改訂振付『ジゼル』
isバレエ・アカデミア、泉・下森バレエ団
2000年8月にスタートしたisバレエ、その初の全幕公演が2002年の『ジゼル』、今回はその再演。
プロローグで母・ベルタとジゼル、アルブレヒト、バチルドなどをそれぞれサスライトで浮かびあがらせ、続いて白い衣装のウィリーを暗示のように観せるところから始まる。幕が開き、あらわれるヒラリオンは酒井直希、人の良さそうな野暮ったい感じがよく出ている。彼にはチャーミングなイメージがあったが、役によってここまで雰囲気を変えられる演技力がある人だということが今回初めて分かった。
そして、ジゼルは大久保彩香、床から少し離れるだけでも甲が出る美しい脚での基礎がしっかりした踊り。1幕ヴァリエーションのバロネの甲もとても美しく、全体がスムーズに流れていたのも良い。アルブレヒトは青木崇、高いテクニックの上に演技力・表現力のあるダンサーである彼、やはり期待通りに舞台に引きこんでくれた。また、ペザントカップルも良かった。小林望の清純な魅力を持った丁寧な踊り、守屋隆生はパに若干不満足な点もあったものの、自然な表情でこれからの成長が楽しみ。
2幕、登場するウィリーたちの衣装は提灯袖に長袖が付いたロングドレス──そう、ウェディングドレスを思わせる形の白いドレスだ。ウィリーは結婚を前に死んでしまった娘たちなのだから、死後の世界で憧れのウェディングドレスを着ているというのはとても自然。そして、眼を奪われたのはジゼルの出の回されて回るあのパ、スピーディに周りスーッと止まる様が本当に操られているようでゾクッとした。ディベロッペなどのゆっくりとした動きもよくコントロールできており、技術がしっかりしているから、物語のなかに入り込み想いをこめて気高さを持ったジゼルを踊ることができるのだとつくづく感じた。
(2010年4月2日 兵庫県立芸術文化センター 中ホール)
撮影:古都栄二/李亜衣(テス大阪)