楽しくしあわせそうな夜のダンス、原美香ファーストリサイタル

ワールドレポート/大阪・名古屋

すずな あつこ
text by Atsuko Suzuna

演出・振付:深川秀夫、キミホ・ハルバート、中田一史「ファーストリサイタル 原美香 with Friends」

原美香バレエスタジオ

関西を拠点にさまざまな舞台で主役をはじめ主要な役を重ねて来た原美香。30歳代になってからドイツ、チューリンゲン州立アイゼナハ歌劇場バレエ団とソリスト契約し、そこでも『くるみ割り人形』に主演したり『じゃじゃ馬馴らし』のビアンカなど主要な役を踊って来た。彼女がの誕生日の4月3日、地元京都で初めてのリサイタルを開催した。
第1部は『パキータ』。山本隆之をパートナーに、原美香が踊ったエトワール、他のバレリーナよりも一段と華奢なのに、気品と輝きは一段と強くて柔らかさもある。山本の優しげな品の良さとともに、華やかに楽しませてくれた。

『眠れる森の美女』竹中優花、武藤天華 撮影:岡村昌夫(テス大阪)

『odradek』中田一史、堤悠輔 撮影:岡村昌夫(テス大阪)

第2部は4つの小作品。このセレクトも原自身のようだが、これがまた良い。まず初めは竹中優花と武藤天華の『眠れる森の美女』よりグラン・パ・ド・ドゥ。優しげでお姫様そのもののような丁寧な動きが良い竹中、少年っぽさも残した魅力の武藤の王子、さすがに息がぴったりで2人にとても合う演目だ。
続いては中田一史振付の『odradek』、中田自身と堤悠輔、石井千春、植木明日香、蒲田直美と5人のダンサーによる作品。抽象的なものなのだが、ダンサーそれぞれが内面を表現することを大切にする人たちである気がしたのと、動けるプロダンサーの身体による表現の魅力を感じた。

3つ目は、深川が東ベルリンで踊っていた時に西側に亡命する人を見た経験を思い出して、ショパンの曲に振付けたという『新たなる道』。西尾睦生を中心に川畑麻弓、武並葉子、中西貴子、水野宏子、要垣内康子、吉田ルリ子とベテランのダンサーたちが、新しい土地への希望、故郷との決別の不安感や悲しさといったさまざまなものが入り交じった感情を、舞台経験が豊富だからこその深みのある表現力で観せてくれた。
そしてこの部のラストはキミホ・ハルバート振付、キミホ自身と佐藤洋介による『Skin to Skin』。私がこの作品を観るのは二度目。だけど、そっくり同じでないのが舞踊作品の醍醐味だ。そんな生の芸術ならではの魅力に溢れながら、けれどやはり前回も今回も心地良かったのは、2人の関係がとても優しいトーンで表されていたこと。何度でも観たい作品だ。

3部は深川秀夫振付の『ソワレ・ドゥ・バレエ』。グラズノフの曲に乗っての、星空の下でのダンス、いつもながら松浦眞也の照明の星空、微妙な色が混じり合ったバックとすじあかりの美しさにはうっとりと溜息が出る。そして、原美香と大寺資二を中心に、石田絢子、川畑麻弓、中西貴子、出井幹子、武藤天華、中田一史、吉田旭、楊在恒、西尾睦生、やすなみずほといったソリストを中心に、コール・ド・バレエも含めての宝石のようなチュチュのきらめき。ソリストたちは大人の魅力を表現できる人が多く、このソワレ......おしゃれな夜のダンスには、とても合っていた。

『ソワレ・ドゥ・バレエ』撮影:岡村昌夫(テス大阪)

原美香と大寺資二のパ・ド・ドゥは楽しく幸せそうで、一層、一番星のような強い輝きをはなって魅力的だった。
(2011年4月3日 京都会館第2ホール)

『ソワレ・ドゥ・バレエ』原美香、大寺資二 撮影:文元克香(テス大阪)

演出・振付:深川秀夫、キミホ・ハルバート、中田一史「ファーストリサイタル 原美香 with Friends」

『Skin to Skin』キミホ・ハルバート、佐藤洋介 撮影:岡村昌夫(テス大阪)

『新たなる道』撮影:岡村昌夫(テス大阪)

撮影:岡村昌夫・文元克香(テス大阪)

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