様々な工夫が凝らされ楽しかった、カンパニーでこぼこ『くるみ割り人形』
- ワールドレポート
- 大阪・名古屋
掲載
ワールドレポート/大阪・名古屋
- すずな あつこ
- text by Atsuko Suzuna
演出・振付:脇塚力『くるみ割り人形』
カンパニーでこぼこ
毎回、独自の解釈で、クラシック演目を一工夫二工夫して観せてくれるカンパニーでこぼこの公演。9回目にあたる今回は『くるみ割り人形』だ。バレエを初めて観る方が何の予備知識もなくても楽しめるように、というのが主宰の脇塚力の方針のようで、幕が上がると、特に1幕のパーティシーンは芝居の要素がとても大切にされていた。
印象に残ったのは、まず、くるみ割り人形をドロッセルマイヤーが取り出すと、それはちゃんと"くるみ"を割る人形で、割ったくるみを順番に子供たちに振る舞い、みんなで美味しく食べるということ。そうして、フリッツ(三股ナナエ)がカタイくるみを割らせたことで、くるみ割り人形は壊れてしまう。また、夜中のシーンでは、ツリーが大きくなるだけでなく、家具やイスなどが順に大きなものに変わっていく。大きなネズミたちに囲まれたクララ(田中幹子)が、まるで小さくなったかのようで、自然に物語が観客に届く演出だ。戦いのシーンにリングが現れてボクシングとして戦われていたのも楽しい。
雪のシーンで通常の雪の音楽の前にチャイコフスキーの「雪娘」からの音楽が足されており、小さな粉雪やクララ、それに王子になったくるみ割り人形(脇塚力)が楽しげに踊るというのも新鮮だった。
クララの田中幹子は初主役だが、始めこそ堅さが見えたものの場面が進むにしがたって柔らかみを持ち、もともと可愛らしい華やかさを持っているのか、子供たちの夢を体現するクララにとても似合っているように思えた。くるみ割り人形の脇塚力もやはり、子供たちに夢を与えるようなニコニコとした笑顔が良い。また、雪の中心を踊った女性、畑起理子が華奢で雪のイメージに合う上に、ていねいな踊り、回転などのテクニックも強くとても良かった。
2幕のお菓子の国は、各ダンサーの個性を見せてのディベルティスマンが楽しい。フリッツを踊った三股が、こちらではまったく違う雰囲気でチョコレートを伸びやかに気持ちよさそうに踊ったのが特に眼に残る。金平糖のグラン・パ・ド・ドゥは福井友美と岡田兼宜。福井はバレエの基礎に基づいた踊りで、テクニックも高く余裕さえ感じさせた。
(2011年4月30日 いたみホール)
撮影:岡村昌夫/古都栄二(テス大阪)