京都会館50周年記念バレエ公演、石原完二『GATE』、『くるみ割り人形』
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ワールドレポート/大阪・名古屋
- すずな あつこ
- text by Atsuko Suzuna
演出・振付:石原完二『GATE』、有馬えり子、井上佳子、原美香、宮下喜久子『くるみ割り人形』
京都市、財団法人京都市音楽芸術文化振興財団、財団法人自治総合センター
京都会館50周年を記念して行われたバレエ公演、全京都洋舞協議会所属団体が力を合わせての舞台となった。上演された作品は2つで、石原完二がこのために振付けた創作作品『GATE』と『くるみ割り人形』全幕。
まず幕開きは『GATE』。サブタイトルに"─開かれるべき扉─"とつけられたこの作品、ベルリンの壁が取り壊されてから20年の今なお、争いの絶えない世界を見つめて平和を願った作品。立ちはだかる壁を登り、越えようとして撃たれて倒れてしまう人々というショッキングな場面から始まり、群舞やソロ、パ・ド・ドゥなど様々な構成の踊りが繰り広げられる。
それぞれ違った魅力を持つ踊りを組み合わせながらも、全体に平和への想いが一貫して流れるのが1つの舞台作品として良い。ダンサーもレベルの高い人が揃っており、特にパ・ドゥ・ドゥを踊った二組の男女が印象に残る。一組目は"鳥の歌"のパートを踊った塚本士朗と井澤照予、2人とも若々しい爽やかさを持ち、井澤の清楚さが戦争の悲しみを良く伝えていた。もう一組は"BLACK EARTH"のパートを踊った武藤天華と藤川雅子。武藤は高いバレエテクニックの上に作品の本質を伝える表現力を持つダンサーだとつくづく思う、また藤川もコンテンポラリーを踊る大人の深みを持ったダンサーとして成長していることを実感させた。
後半は、子供達も多数出演しての『くるみ割り人形』全幕。クララの岩城旭未は少女ながら基礎がきちんと入っていて、素直な演技に好感が持てる。そして1幕のパーティシーンには、スタルバウム氏の母、叔父、叔母という役で、この京都会館の50年とともに歩んで来たといえるだろう長いキャリアを持つバレエの先生方、本城ゆり、西恭三、福本静江が出演。若い男性ダンサーがエスコートするなど、本当に家族のような温かい雰囲気が醸し出され、50周年にふさわしい趣向だと微笑ましく思った。
雪の国の中心、木下友美は知的な雰囲気に魅力が感じられ、そのパートナー末松大輔はノーブルさが良い。王子・アンドリュー・エルフィンストンをパートナーに金平糖の精を踊ったのは八隅莉子。八隅の踊りには、香りたつような気品があり、夢を見るようなロマンティックな雰囲気を醸し出して金平糖の精の表現としてとても良かった。また、観てみたいダンサーだ。
(2010年10月3日 京都会館第1ホール)
撮影:岡村昌夫・文元克香(テス大阪)