アルティ・アーティスト・プロジェクトの2人の若手振付家による『カルミナ・ブラーナ』
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ワールドレポート/大阪・名古屋
- すずな あつこ
- text by Atsuko Suzuna
アルティ・アーティスト・プロジェクト
山口陽子、河邊こずえ:演出・振付『カルミナ・ブラーナ』
京都府立府民ホール"アルティ"が行っているアルティ・アーティスト・プロジェクト(A.A.P.)。ブヨウ部門公演では芸術監督である望月則彦が演出・振付を手がけることが多いが、6回目を迎えた今回はA.A.P.メンバーである若手2人の振付家に任せ、望月はオブザーバー的な役目に回った。
その山口陽子、河邊こずえ、2人の振付によって上演されたのは『カルミナ・ブラーナ』。迫力のある群舞で幕を開け、さまざまなシーンに移り変わる展開の仕方もスムーズでグイグイと舞台に引きこんでゆく。また、個々のダンサーの持ち味を活かしたキャスティングで、特に男性ダンサーのキャラクターの違いが上手く活かされていたのが印象的。
松原博司の大人の男の俗っぽさを持った荒々しさ、桑田充の挑戦的な鋭さ、それに何より主な役割を担う青年役の奥村康祐が適役で、彼が醸し出す成長途上の青年独特の不安定な感じ──好奇心を持ちながらも芯はピュアで、だからこそ子供の頃には分からなかった広い世の中の様子にとまどいを持ち、それでも翻弄されながら進んでいく──そんな彼の踊りが、この作品を観客の心により自然にしみ込むものにしていたように感じられた。女性ダンサー達など他の出演者も一定以上の力を持った人が揃っており、全体にとても見応えのある作品に仕上がっていた。 日本ではまだまだ少ない公共ホールが主催しての継続的なダンス・プロジェクトであるA.A.P.で、ダンサーだけでなく振付家も着実に育っているのが嬉しい。
(2010年2月27日夜 京都府立府民ホール"アルティ")