バレエグループあすなろ『ドン・キホーテ』『マダム・バタフライ』ほか
- ワールドレポート
- 大阪・名古屋
掲載
ワールドレポート/大阪・名古屋
- すずな あつこ
- text by Atsuko Suzuna
川口節子:演出・振付『マダム・バタフライ』
岡田真千代:振付『序曲「1812年」~戦争と平和~』
太田一葉:振付『スパゲティウェスタンズ』
バレエグループあすなろ
15年前から2年に一度公演を行ってるグループあすなろ。現在、岡田純奈と川口節子が中心となって活動しているグループだ。
今回の公演の幕開けは、岡田の指導で上演された『ドン・キホーテ』第3幕より。キトリの山本佳奈は、恵まれたスタイルで柔らかく素直な笑顔に好感が持てる。バジルは碓氷悠太で落ち着きを持っての踊り、高度なテクニックはさすが。
続いては「若い芽のコンサート」ということで、若手振付家の作品を3点。太田一葉振付『スパゲティウェスタンズ』は、ジュニアの女の子たちの笑顔いっぱいの踊りにこちらも楽しくなる。スピィーディな動きもよくこなしていた。岡田真千代振付の『序曲「1812年」~戦争と平和~』は、タイトルから予想できる通りドラマ性のある作品。このテーマならもう少し長い作品になっても良いからじっくり創り込んでみてはどうかと思った。また、さまざまなシーンを演じることの出来るダンサーが揃っているのを感じ、グループとしてのこれからが楽しみに思えた。太田一葉振付『Dear My Valentine』は、ポップな可愛さ溢れる作品。10代後半の少女達らしさを活かした振付にセンスを感じた。
そしてラストは川口節子振付『マダム・バタフライ』。シューマンとプッチーニの曲を使っての蝶々夫人。今、日本を見渡すと、コンテンポラリー・ダンスの世界を中心に、抽象的な作品で良いものを創る人は少しずつ増えて来ているけれど、ドラマ・バレエの質高い創り手というとなかなか思いつかないものだが、川口はそういった貴重な存在の人だと思う。それも"女性"の視点が活かされているのがまた興味深い。この作品でも心証風景を映すような"海"の使い方、絶望のどん底にいる蝶々夫人(高木美月)の激しい情念の踊りにゾクゾクした。日本女性はどんな時にもじっと耐え----けれど、その心の中はこれほどまでに荒れ狂っている。こういうことを表すことが出来るのはやはり舞踊だからこそだし、それを描いた川口、踊りきった高木に拍手を送りたい。
(2010年2月11日 名古屋市芸術創造センター)