ユニークなプログラム、日本を題材としたバレエほか
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- 大阪・名古屋
掲載
ワールドレポート/大阪・名古屋
- 桜井 多佳子
- text by Takako Sakurai
大西縁振付『女ねずみ小僧』、『パキータ』ほか
北山大西バレエ団
午後2時からの〔第18回大西縁バレエスクールの発表公演〕にそのまま引き続いての〔北山大西バレエ団第9回リサイタル〕。終演は午後8時前と長丁場だったが、舞台上のダンサーたちは元気そのもの。タフな集団だ。
発表公演最後のプログラムは『須佐之男』(再演)。バレエ団代表、スクール校長の北山大介の作/演出/音楽というオリジナル。録音されたセリフに合わせた演技は、どうしても言葉に頼るからか一本調子になるという課題は残した。だが、姉、天照大神(田口桃子)の怒りを買った須佐之男(北山美秀)が人間界に下り、おろち退治をするという神話に基づいたドラマ展開は、わかりやすくスピーディ。8つのアタマを持つといわれる「おろち」は、「おろちの頭」(的場涼香)ほか7人のダンサーが演じ、村長役、高谷大一が舞台を引き締めていた。
リサイタルは、ゲストミュージシャン、〔鼓楽衆 翔〕の和楽器を中心にした演奏で始まり、続いての演目は、『女ねずみ小僧』。ねずみ小僧たちと岡っ引きが、ノリの良い音楽にのって追いかけっこをする。江戸の町の塀の上を走り回り、床の上では素早い回転。もちろんこちらも同バレエ団のオリジナルだ。
このバレエスクール・バレエ団のダンサーに共通するのは、回転の速さ。小さな生徒でも器用にくるくる回る。ただ、回ることに特化している感は否めず、ポジションの甘さや優雅さに欠けるなどの欠点も指摘されることが多い。指導者もそれを理解しているので、いわば確信犯的回転力強化ともいえる。「とにかく回転力をつけ、それからポジションの正確さや優美さを追求するのです」とスクール代表の大西縁から聞いたこともある。その考えが正しいのかそうでないのかの究明をここではするつもりはない。ただ、小さいときには回転の強さだけが目立っていた的場涼香に、シニアらしい優雅さが身についていたことは特記しておきたい。この日の最後のプログラム『パキータ』では、河島真之をパートナーに、もちろん回転の強さをアピールしつつも、上半身もていねいに使い、同バレエ団エトワールの存在感を示していた。
(2010年1月31日、大阪国際交流センター)
撮影:Group・One早川洵