豪華さと雰囲気のある『くるみ割り人形』
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- 大阪・名古屋
掲載
ワールドレポート/大阪・名古屋
- 唐津 絵理
- text by Eri Karatsu
ナターリャ・ボリシャコーワ、松岡伶子:振付『くるみ割り人形』
松岡伶子バレエ団
名古屋でも『くるみ割り人形』をはじめ、年末のバレエの公演の多さは驚くほどであり、どの公演に足を運ぶのか、迷われた観客も多かったのではないだろうか。そういう私も自らの企画とのバッティングでおほとんどの舞台を見ることができなかった。唯一見ることができたのが、「第27回CBCセミナースペシャル」主催による松岡伶子バレエ団の『くるみ割り人形』だ。この公演は、地元の放送局であるCBCクラブが、海外でお馴染みの年末の『くるみ割り人形』を名古屋でも定着させたいと27年前に企画したもの。そういった意味では、年末の公演数を見るだけでも、すでにその成果は充分に果たされたと言って良いだろう。
松岡伶子バレエ団も2年に1度はこのCBCセミナー主催の上演を行ってきたが、今回はバレエ団の主催公演(23、24日)と合せて、合計3日間のトリプルキャストによる連続上演となった。音楽も竹本泰蔵の指揮によるセントラル愛知交響楽団と金城学院グリークラブの合唱が参加した豪華な舞台だ。これまでの松岡版『くるみ割り人形』をさらに進化させた元キーロフ・バレエのナターリャ・ボリシャコーワと松岡伶子による共同振付だという。
3日目は、松原帆里がクララを、窪田弘樹が王子を演じ、ベテランらしい落ち着いた佇まいで、主役の大役をしっかりと果たしていた。このバレエ団の魅力のひとつは、常々ダンサーの層の厚さだと感じているが、今回もそれを生かした配役の妙が光る舞台であった。第一幕では、ムーア人を市橋万樹、コロンビーヌを早矢仕友香などのテクニシャンが踊って客席を沸かせる。そして主役級の安藤有紀や伊藤優花がさりげなくメヌエットを踊り、あらゆる角度から舞台を盛り上げ、観客を魅了するなど、主役はもちろんのこと、どの役柄も見逃せないのだ。それはねずみや兵隊などのジュニアの踊りでも同様。すでに選抜されてきている出演者は、子役といってもすでに舞台に上がる覚悟が出来ている未来のダンサーなのだ。今回は特に、ボーイズクラスで鍛えられている男の子たちの成長が眩しかった。
ロシアの舞台セットの豪華さや、客席のバルコニーからの合唱など、様々な演出も凝らした今年の松岡伶子バレエ団による『くるみ割り人形』は、ヨーロッパの師走を髣髴とさせるような優美さと品格を称えていた。
(2009年12月25日 愛知県芸術劇場大ホール)
撮影:むらはし和明