クララの夢を巧みに編成した深川秀夫の『くるみ割り人形』
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- 大阪・名古屋
掲載
ワールドレポート/大阪・名古屋
- すずな あつこ
- text by Atsuko Suzuna
深川秀夫:振付『くるみ割り人形』抜粋ほか
藤原バレエアカデミー、ダンス・トゥループ22nd
藤原悦子、錦見眞樹親子が主宰する藤原バレエアカデミーの舞台。1部と2部は小品やヴァリエーション、グラン・パ・ドゥ・ドゥが並ぶコンサート、3部が深川秀夫振付『くるみ割り人形』抜粋という構成。
コンサートでは、大勢で踊るような演目でも、それぞれの出演者に見せ場を作っているのが感じられて良い。また、錦見眞樹がロッシーニの曲に振付け、森本華、中村美輪、山本あずさの3人が踊った『Run Wild』は、ファンファーレから明るく始まるこのダンス、テンポ良くショー的で観ていて楽しいものに仕上がっており印象に残った。
それに『The Stars and Stripes』よりグラン・パ・ド・ドゥをアンドレイ・クードリャと共に踊った桑原麻衣、小気味良い動きと明るいにらみを効かせた笑顔が、この踊りにとても良く合っていた。
そして、メインは深川秀夫振付『くるみ割り人形』抜粋。1時間程度の作品なのだが、クララが夢の世界を旅するというお話がきちんと満喫でき、深川独自のオリジナリティーも溢れている。いわゆる一幕のパーティ場面はなく、プロローグ風に紗幕前でドロッセルマイヤー(アンドレイ・クードリャ)がお菓子の国に誘うシーンから始まり通常の2幕が繰り広げられる。そのなかでも芦笛の音楽で"ポーランド"、ギゴーニュおばさんとキャンディ・ボンボンの音楽でフランス国旗を持っての"フランス"と独特。金平糖の精(斉藤由佳)と王子(大寺資二)のグラン・パ・ド・ドゥの前にはクララのソロ、兵隊ぶりも入る楽しげで可愛い踊りが挿入されている。そして、最後はなんと雪の場面。お菓子の国から白が美しい雪の中へというのは、『くるみ割り人形』を見慣れている身には意外な順だが、これが違和感なくクララとともに旅をしている気分になれるのだから深川の演出手腕はさすが。
可愛らしい雰囲気の上にテクニックがあってしっかり踊るクララ役の中村、儚い小さな金平糖のイメージがぴったりで華やかさも持つ斉藤、大寺のノーブルな王子、アンドレイの優しいドロッセルマイヤー、花のワルツの中心・森本華、雪の女王の桑原麻衣と、主要キャストをはじめとするダンサー達が夢の世界を楽しませてくれた。
(2009年11月29日 大阪厚生年金会館芸術ホール)
撮影:田中 聡(テス大阪 )/金原優美(テス大阪 )