セントルイス・バレエ芸術監督、堀内元 バレエ USA
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掲載
ワールドレポート/大阪・名古屋
- すずな あつこ
- text by Atsuko Suzuna
演出・振付:堀内元「堀内元 バレエ USA」
兵庫県立芸術文化センター
元ニューヨーク・シティ・バレエのプリンシパルで、現在セントルイス・バレエ芸術監督を務める堀内元。バレエファンなら誰もが知っているバランシンに愛されたダンサーだったが、NYCBを止めた後もアメリカで活躍していて、彼の振付作品を日本で観る機会はほとんどかった。
今回、兵庫県立芸術文化センターではそれが<堀内元 バレエ USA>として実現した。"1 hour シアター"ということで、約1時間で気軽に観られるコンパクトなプログラムに、彼が度々夏のワークショップを行っているバレエ・スタジオ・ミューズのダンサーたちがともに出演した。
舞台はジョージ・バランシン振付、グリンカ曲の『Valse Fantasie』で明るく幕を開けた。この最初の作品では東山香織と末原雅広が中心を、さらに4人のダンサーが大きく広がるように踊り、思わず引きこまれる。
続いて堀内元のトークにより、セントルイス・バレエについて映像を交えて紹介した。『白鳥の湖』や『眠れる森の美女』といった古典全幕上演の際の豪華な舞台映像もあり、充実したクラシック・バレエのプログラムにも取り組んでいるカンパニーであることがうかがえる。バランシン以降の作品ばかりをレパートリーとしているのではないことが分かり、堀内のカンパニーへの興味が膨らんだ。
次からの3つが堀内元振付作品。まず『Elliptique(楕円)』で音楽はジョー・モッラ。赤いライトの中、円になって祈るように3組のカップルが踊る。どこかにノスタルジックで憂いも感じさせる雰囲気があった。出演者には現代的な動きも、クラシックのテクニックを活かしたアダージオも共にこなせるダンサーが揃っていることが分かる。
続いては、堀内元本人と森ティファニー2人での小品『Once in a Blue Moon』。森はバレエ・スタジオ・ミューズ出身で、現在セントルイス・バレエで活躍するダンサー。エリック・サティの曲、ピアノ・ソロの中、恋人同士が語り合っているような感じの、楽しく軽快な洗練されたダンスだった。
ラストは『Wake Up』、堀内とコラボレーションすることの多いジョー・モッラの曲に乗って、キャミソールレオタードに短い同じ色のスカートの女性たちと、黒いスパッツに黒いTシャツの男性たちというシンプルな衣装で、おだやかで優しいパ・ド・ドゥや、ポップなものなどさまざまなタイプの踊りが繰り広げられた。バランシン以降のアメリカらしい......とも感じられる、優しい香りが漂い続ける1時間が瞬く間に過ぎていった。
(2010年8月22日 兵庫芸術文化センター阪急中ホール)
撮影:Takashi Iijima