高田万里、針山愛美も踊った平城遷都1300年記念バレエミュージカル
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掲載
ワールドレポート/大阪・名古屋
- すずな あつこ
- text by Atsuko Suzuna
芸術監督:吉元和彦、振付・構成:稲尾光子
「バレエミュージカル『大和が舞う』〜額田王物語〜」
奈良国際バレエ工房
平城遷都1300年記念事業の一環として行われたこの公演。『日本書記』の記述によると、奈良は日本ではじめて芸能研究所ができた土地なのだという。推古天皇の時代、百済からの帰化人・味摩之(みまし)が、呉国で学んだ伎楽舞(くれのうたまい)を日本に伝えた。その舶来音楽と舞踊に目を見張り、大和桜井の里(飛鳥の広厳寺=向原寺付近)に、官舎を与え少年たちに伝習させたのが聖徳太子であるという。「フランスでバレエ学校を創ったのはルイ14世だったけれど、日本で舞踊の学校を初めて創ったのはずっとずっと時代が遡った頃の聖徳太子だったんだ」と、つい、ちょっと重ね合わせてみたくなった。
今回の舞台は、現代の若者の争いと、額田王(高田万里)と大海人皇子(池上彰朗)、中大兄皇子(沖潮隆之)、それにその娘・息子である十市皇女(槇直子)、大友皇子(吉田旭)の、争いに翻弄される生き様とを、時代を経て重ね合わせて見せる構成。
額田王役の高田万里のラインで魅了しながら、その場面場面の心情が伝わる踊り、時代を超えて見せる〈神の鳥〉朱雀を踊った針山愛美の、この世のものではないことをその動きや存在感から醸し出す踊り──この2人の女性ダンサーは、かなり舞台を良い方向に持っていっていたとつくづく感じた。
(2010年8月15日 なら100年会館大ホール)