クラシックのグラン・パ・ド・ドゥとともに見応えのある創作作品も上演された「World Dream」

ワールドレポート/大阪・名古屋

すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna

エリート・バレエ・スタジオ「World Drea」VI

『The Symphony』『Abstract Object』『Be Courageous』中野吉章;振付、『Just another night out ─いつもの夜会─』『祈輪』中野光子;振付、『alternative』前田寛子;振付、『The pulse of our hearts』中野光子、中野吉章、Jessica McCann;振付

毎回、世界で活躍するダンサーたちも集ってオリジナル作品を創作して観せてくれることが楽しみな「World Dream」も6回目を迎えた。もちろん、クラシックのグラン・パ・ド・ドゥも楽しみなのだけれど、この舞台のために多彩な作品が創作されるというのは、他の舞台ではなかなかできないことで意義を感じる。

幕開けは、前田奈美甫と中野吉章の『くるみ割り人形』よりグラン・パ・ド・ドゥ。前田には金平糖の精のあの音楽の繊細なあやうさがとてもよく似合う。中野は存在感、華を持ってさすが。続く『眠れる森の美女』より青い鳥のグラン・パ・ド・ドゥは、Jessica McCann(ジェシカ・マカン)と宮川新大。二人とも表情イキイキ。宮川のとても美しい甲のアントルシャ、大きなアントルラセが印象に残った。
続いて、中野光子振付の2作品。大人の魅力をピアソラの音楽に乗せて描いた『Just another night out ─いつもの夜会─』、中野吉章とJessica McCann(ジェシカ・マカン)を中心に実力派ダンサーたちが踊ったチベット僧侶たちの力強い祈りが地の底から響くようだった『祈輪』。そして、中野吉章振付で群舞の魅力も見せた『The symphony』で第1幕は締めくくり。

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『Just another night out ─いつもの夜会─』撮影:Shin STYLE. 高田 真(すべて)

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『祈輪』

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『くるみ割り人形』よりグラン・パ・ド・ドゥ 金平糖の精:前田奈美甫、コクリューシ王子:中野吉章

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『眠れる森の美女』より青い鳥のグラン・パ・ド・ドゥ フロリナ王女:Jessica McCann、青い鳥:宮川新大

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『ドン・キホーテ』よりグラン・パ・ド・ドゥ キトリ:大久保彩香、バジル:市橋万樹

第2部は、中野吉章振付で、中井嵩人、市橋万樹、檜山和久、宮川新大、吉田周平、田中陣之介と実力派男性ダンサーたちが踊った『Abstract Object』。コミカルな部分もありつつパワフル。男性たちが"思いっきり踊っている!"というのが、観ていて気持ち良い。『エスメラルダ』よりグラン・パ・ド・ドゥは、佐々部佳代と中野吉章。佐々部の押さえた魅力が良い。国内外で活躍する3人の女性、前田奈美甫、片岡こなみ、日髙世菜による『ラ・バヤデール』より幻影の踊りを挟み、『Be Courageous』。中野吉章振付で、田中愛子、福田恵未、Jessica McCann(ジェシカ・マカン)、中井嵩人、吉田周平が踊った。繊細な心のあやを丁寧に描いた作品。中野は様々なタイプの作品を創作するが、こういった言葉で表せない感情を表したものを、ぜひまた手掛けて欲しいと思う。

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『Abstract Object』

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『ラ・バヤデール』よりグラン・パ・ド・ドゥ
ガムザッティ:日髙世菜、ソロル:檜山和久

大久保彩香&市橋万樹によるバレエテクニックの楽しさを満喫できる『ドン・キホーテ』よりグラン・パ・ド・ドゥを挟み、前田寛子振付の『alternative』、そしてラストは、ジュニアたちも群舞で加わっての中野光子、中野吉章、Jessica McCann振付『The pulse of our hearts』。和太鼓の堀江秀幸の演奏とともに迫力に引き込まれた。そんなこの作品で最も印象に残ったのは、高比良洋の踊り。彼はケガにより、他の出演予定作品に残念ながら出演できなかったのだが、このラスト作品は踊ってくれた。柔らかさを持った筋肉が美しい、惹きつける踊り、ポジティブなものが感じられ、爽やかな気持ちでの終演となった。

(2018年6月24日 SAYAKAホール大ホール)

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『The pulse of our hearts』撮影:Shin STYLE. 高田 真

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『The pulse of our hearts』撮影:Shin STYLE. 高田 真

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