18回目を迎えた関西の夏を代表するガラ公演、MRBバレエスーパーガラが今年も華やかに開催された

ワールドレポート/大阪・名古屋

すずな あつこ
text by Atsuko Suzuna

MRBバレエスーパーガラ 松田敏子主催

『Solitude』『妖精たち』他 漆原宏樹;振付、芸術監督

松田敏子主催のMRBバレエスーパーガラ、今回18回目を迎え、関西の夏に定着した感がある。クラシック・バレエを中心に、これからが楽しみな若手ダンサーのヴァリエーションからベテランダンサーによるグラン・パ・ド・ドゥや創作作品まで多彩な23演目が上演された。
どれも見応えがあったが、特に印象に残ったものを紹介する。

まず、幕開けがロシア国立クラスノヤルスク歌劇場バレエ団の多久田さやかと谷桃子バレエ団の今井智也を中心に、群舞もついての『ダイアナ&アクティオン』のグラン・パ・ド・ドゥ。多久田の素直で飾らない踊りに好感、今井のキレのある動きも良い。続いての『ジゼル』よりパ・ド・ドゥは貞松・浜田バレエ団の竹中優花と武藤天華、2人の空気を感じるような丁寧な踊り。竹中からは優しさがにじみ出るようだった。ロシア国立クラスノヤルスク歌劇場バレエ団の桑原万奈と金指承太郎が踊ったショスタコーヴィチの音楽に乗せた『お嬢様とならず者』よりは、短い抜粋ながら、物語がスムーズな動きの中から伝わってきた。

『ジゼル』よりパ・ド・ドゥ 竹中優花、武藤天華 撮影:尾鼻文雄

『ジゼル』より 撮影:尾鼻文雄

また、コンクールなどの受賞者として名前をよく目にする増田響は、左右木健一振付の『ペルペティオモビール』を踊った。メリハリを持った自然な踊り、これからの成長が楽しみなダンサーだ。前田奈美甫と恵谷彰が踊った『小夜曲(セレナーデ)』は、ドヴォルザークの曲に上杉真由が振付けた新作。バレエテクニックを楽しげに見せながら、香りも漂う。大人の可愛らしさが感じられる踊りだった。
主催の松田敏子は、公私ともにパートナーの小嶋直也と『コッペリア』よりグラン・パ・ド・ドゥ。コミカルな魅力も程よく出した息の合った踊りだった。ベテランながら2人とも身体が軽そうなのはさすが。玄玲奈と堤悠輔は素我螺部(Scarabe)藤井泉・宮原由紀夫の振付で『Blue』。脱力感と"間"が独特で面白い作品、クラシックが続く中、こういうちょっと違った演目が入るのは良い。第1部の最後には、今年、牧阿佐美バレヱ団に入団した太田朱音とABTの隅谷健人が『胡桃割り人形』よりグラン・パ・ド・ドゥを品良く、輝きを持って踊った。

『小夜曲』前田奈美甫、恵谷彰 撮影:尾鼻文雄

『小夜曲』 撮影:尾鼻文雄

『コッペリア』よりグラン・パ・ド・ドゥ 松田敏子、小嶋直也 撮影:尾鼻文雄

『コッペリア』より 撮影:尾鼻文雄

『Blue』玄玲奈、堤悠輔 撮影:尾鼻文雄

『Blue』 撮影:尾鼻文雄

『胡桃割り人形』よりグラン・パ・ド・ドゥ 太田朱音、隅谷健人 撮影:尾鼻文雄

『胡桃割り人形』より 撮影:尾鼻文雄

第2部の幕開けは、漆原宏樹がショパンの曲に振付けた群舞『妖精たち』、新作だ。『レ・シルフィード』で使われる曲と同じものも使いつつ、妖精たちが慎ましやかに遊ぶような雰囲気。松本真由美を中心に踊れるバレリーナたちがバレエだからこその美しさを活かして踊った。『海賊』よりパ・ド・トロワは、メドーラの大野絵里奈の広がるような大きな踊り、コンラッドの武藤天華の抑えた魅力、ロシア国立エカテリンブルク歌劇場バレエ団の寺田智羽のアリの、若さ弾ける鮮やかなテクニックが眼に残った。

法村珠里と碓氷悠太の『ロミオ&ジュリエット』よりパ・ド・ドゥはバルコニーシーン、華やかさを持った恋の喜び溢れるジュリエットだった。K バレエカンパニーの涌田美紀と石橋奨也は、正確なパ、クリアーな知性を感じさせて『眠れる森の美女』よりグラン・パ・ド・ドゥを踊った。
そして、強く心に響いたのが漆原宏樹振付の新作、マーラーのアダージェットに振付けた『Solitude』。"孤独"という意味のこの作品を楠本理江香と山本隆之が踊った。舞台を重ねた2人だからこそ出せる深み、大人の夫婦のお互いを想い合い、いたわりあい、それでもどうしようもない──そんな姿を描いているように感じられた。

『ロミオとジュリエット』よりパ・ド・ドゥ法村珠里、碓氷悠太 撮影:尾鼻文雄

『ロミオとジュリエット』より 撮影:尾鼻文雄

ロシア国立タタールスタン歌劇場バレエ団の寺田翠と大川航矢は伸び伸びとしたテクニックを楽しげに見せて『パリの炎』よりグラン・パ・ド・ドゥ、ダイナミックな大川のジャンプ、飾らない可愛らしさ、速くて細かいバロネが印象的な寺田。ラストはロシア国立ブリヤート歌劇場バレエ団の上村悠と岩田守弘が『ベニスのカーニバル』よりサタネラのグラン・パ・ド・ドゥを踊った。演技、視線の使い方もこなれたベテランだからこその踊り、加えて、岩田の年齢を感じさせないジュテ・アントゥールナンなどの技に拍手が自然に湧いた。 そしてフィナーレは、アリを踊った寺田智羽の素晴らしく高いジャンプの『ゴパック』で始まり、「もう、1回」と、若手男性5人で『ゴパック』を踊り、華やかに幕を閉じた。
(2016年7月31日 グランキューブ大阪)

『Solitude』楠本理江香、山本隆之 撮影:尾鼻文雄

『Solitude』 撮影:尾鼻文雄

ベニスのカーニバル』よりサタネラのグラン・パ・ド・ドゥ 上村悠、岩田守弘 撮影:尾鼻文雄

『ベニスのカーニバル』より 撮影:尾鼻文雄

フィナーレ(『ゴパック』)撮影:尾鼻葵

フィナーレ(『ゴパック』)撮影:尾鼻葵

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