ピッツバーグ・バレエの中野吉章、ジョフリー・バレエの新井誉久作品など多彩に「World Dream Ⅳ」
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掲載
ワールドレポート/大阪・名古屋
- すずな あつこ
- text by Atsuko Suzuna
「World Dream Ⅳ」エリート・バレエ・スタジオ
『囚われた麗人 ─エレン・ダグラス─ 』『Divertimento』『Living in the Moment─いまを生きる─』『In-perfection』中野吉章;振付、『Rachmaninoff』新井誉久;振付、『the Story』前田寛子;振付 他
2013年の北京国際バレエ&コレオグラフィーコンクールでの金メダルなど、ダンサーとして多くのコンクールで優秀な成績を上げているピッツバーグ・バレエ・プリンシパルの中野吉章。彼は、現在、踊るだけでなく、ピッツバーグでも振付作品を発表し好評を得ているという。彼の新作やジョフリー・バレエの新井誉久の振付作品といったオリジナル演目を多彩に盛り込んだ公演が開催された。中野吉章の母・中野光子主宰のエリート・バレエ・スタジオ主催で行われている「World Dram」の4回目という形で、世界で活躍するダンサー、活躍した経験を持つダンサー、これからの若手有望ダンサーなどレベルの高いダンサーたちが揃っての舞台となった。
『World Dream を開く想いから...』 撮影:高田真(Shin STYLE)(すべて)
幕開けは中野光子が構成し、関わる振付家が力を合わせて振付けた『World Dream を開く想いから...』。ガーシュインの音楽に乗せて、舞台上に過去の映像を映し出しての群舞。憧れの先輩から次の世代が学び......といったことがしみじみと伝わってくるような内容だった。
続いては、グラン・パ・ド・ドゥが3つ。前田奈美甫と市橋万樹の『サタネラ』よりグラン・パ・ド・ドゥは、市橋の達者な演技が良いのはもちろん、前田が、半年ほど前に比べて成長し、淑女のエレガントな香りを身につけているのに眼を奪われた。続いてはベテランらしい雰囲気が感じられる木岡多真美と高比良洋の『ラ・シルフィード』よりグラン・パ・ド・ドゥ。そして、金髪で抜群のスタイル、美貌が目を惹く飯島望未と中野吉章の『海賊』よりグラン・パ・ド・ドゥ、中野の高テクニック、飯島の"特別な女性"と否が応でも思わせるような輝き、目が釘付けになった。飯島はこの秋からチューリッヒ・バレエに入団するのだという。
そして、ピッツバーグ・バレエのジェシカ・マカンとジョフリー・バレエの新井誉久が踊った『囚われた麗人 ─エレン・ダグラス─ 』は、中野吉章がシューベルトの「アヴェ・マリア」に振付けたもの。穏やかな祈りが感じられるドラマティックな作品で素敵だった。続いての『Divertimento』も中野の振付で、モーツァルトの曲を弦カルテットで生演奏されるなかで。
休憩を挟んで、ベテランの前田寛子振付『the Story』に始まり、これからが楽しみな若手がたくさん出演して、エトワールはなしの『パキータ』より。また、目を引いたのがスマートフォン片手に下を向いて歩く現代人たちをべートーヴェンの曲に乗せて優しいトーンで描いた『Living in the Moment─いまを生きる─』、これも中野の振付だ。
『囚われた麗人 ─エレン・ダグラス─ 』
そして、前田奈美甫と中野吉章中心に実力派ダンサーたちが踊った『Rachmaninoff』は、新井誉久振付。『サタネラ』でも感じた前田奈美甫のエレガントな香りは、こちらでさらに花が開くように広がり、惹きつけられた。
ラストは、アメリカらしく踊りの魅力をコミカルさも加えて表した中野振付『In-Perfection』、完璧を目指すダンサーたちを明るく前向きに表現して、華やかに幕を閉じた。
(2016年6月19日 大阪狭山市文化会館SAYAKAホール)
『サタネラ』より
『海賊』より
『Rachmaninoff』
『the Story』
『Rachmaninoff』
『the Story』
『Rachmaninoff』
「World Dream Ⅳ」撮影:高田真(Shin STYLE)(すべて)