バレエを観なれない人も楽に見られそうな、お洒落な演出・振り付けによる『白鳥の湖』
- ワールドレポート
- 大阪・名古屋
掲載
ワールドレポート/大阪・名古屋
- すずな あつこ
- text by Atsuko Suzuna
株式会社ヤスナート
『白鳥の湖〜ラヴ・ストーリーは突然に〜』やすなみずほ;振付
モノクロームの、男女が抱き合う背中の写真がメインの映画のようなリーフレット。バレリーナで劇団四季などでも活躍したやすなみずほが、バレエクリエーターとして守山市民ホールとともに手がけた舞台のリーフレットだ。当日のプログラムも冊子ではなく、小さなプラスティクのケースにカードが12枚、そこにキャストやスタッフが書かれている。
演目は『白鳥の湖』なのだが、小ホールでキャストは8人だけ、約1時間とコンパクト、タイトルが『白鳥の湖〜ラヴ・ストーリーは突然に〜』。チャイコフスキーの曲を川崎令子トリオが、ジャズ調に編曲した生演奏に乗せておしゃれに上演された。しかも、衣裳はチュチュではなくワンピースなど、男性もバレエタイツではない。バレエ衣裳のヒラヒラやタイツが苦手な人にも自然に受け入れられそうだった。これなら、普段、バレエを観慣れない人も観てみようと思うかもしれない。
撮影:(株)アールミュージック(すべて)
そして、そんなにも普段観る『白鳥の湖』と外見は違いながら、ストーリーはきちんと分かる構成。独特の演出もあり、花嫁候補たち4人(清水佐織、西尾睦生、田中友麻、やすなみずほ *昼公演は北佳香)が魔性の男(ロットバルト)に誘惑されて、次々と惹かれ夢中になっていく。白い衣裳をとって黒い衣裳になりながら踊られ、とても興味深く観た。
初恋の女(オデット)の片岡典子は清楚な魅力で丁寧な踊り、誘惑の女(オディール)の谷口陽子は奔放で妖艶な魅力、恋に落ちる男(ジークフリート王子)の矢木一帆は、ほとんど出ずっぱりで踊りの見せ場も続く大変な振付だったが、品を持って王子が勇敢な男性に成長していく姿を好演。また、魔性の男(ロットバルト)の稲毛大輔はとても表現力豊か、このロットバルトなら魔法にかかったように惚れてしまうかも、と思わせた。8名のキャスト全員が実力を持ったダンサーで少数精鋭を活かした舞台に仕上がっていた。
こんな鑑賞しやすい企画を入り口に、バレエを観る人が増えるといいなと思いながら劇場を後にした。
(2016年4月23日夜 守山市民ホール・小ホール)
撮影:(株)アールミュージック(すべて)