森田玲子とキジママナカの自作自演の2作が「なにわ芸術祭新人賞」を受賞した──なにわ芸術祭

ワールドレポート/大阪・名古屋

すずな あつこ
text by Atsuko Suzuna

第53回なにわ芸術祭バレエ&コンテンポラリーの饗宴

全日本洋舞協会、産経新聞社ほか:主催

日本舞踊や落語、クラシック音楽、ジャズなどさまざまなジャンルの舞台が行われ、時代を担う芸術家に新人賞が贈られる「なにわ芸術祭」。産経新聞社が昭和39年(1964年)に創設、今年53回目となる総合芸術祭だ。その一環として行われた「第53回なにわ芸術祭 バレエ&コンテンポラリーの饗宴」を観た。

今回の新人賞に選ばれた舞踊作家部門とダンサー部門を受賞した参加者が、ともに自作自演のソロを踊った。舞踊作家部門新人賞は森田玲子の『In the Blind』、黒い目隠し姿で登場し、手探りで進む。壁をさぐり、出口を求め......さまざまな人、場面に通じる抽象的な"不安感"が表現されているように思えた。ダンサー部門新人賞はキジママナカの『独』、ずーっと無音、ブルーのワンピース姿で、髪を振り乱し激しく踊る。全体に集中度が高く、軸をゆるめて回るなど動きに目を引くところが多かった。

なにわ芸術祭新人賞(舞踊作家部門)『In the Blind』森田玲子 撮影:和田北斗(テス大阪)

『In the Blind』森田玲子
撮影:和田北斗(テス大阪)

なにわ芸術祭新人賞(ダンサー部門)『独』キジマ マナカ 撮影:古都栄二(テス大阪)

『独』キジマ マナカ
撮影:古都栄二(テス大阪)

ほかに、トゥ・シューズでの高テクニックを『エスメラルダ』のヴァリエーションを編曲した音楽に乗せタンバリンを持ってショー的に見せた『リズム・オブ・ゴールド』の山田梨央、高島康平をパートナーに、初々しく素直に『ダイアナとアクティオン』のグラン・パ・ド・ドゥを踊った弓場千如、一曲の中で物語の流れを感じさせて『ドン・キホーテ』よりジプシーの踊りを踊った関口晴香など、さらに磨くと伸びそうなダンサーも多かった。北海道からの参加で、北海道にちなんだテーマでの自作自演、赤川詩織の『カムイノミ〜花帰葬〜』は祈りを感じるよう。北山大西バレエ団の『シンフォニカ』、中野由佳子バレエスクールの『リオ五輪〜サンバでボッサでマンボなエール!!〜』といった群舞も楽しかった。

受賞対象以外ではベテランたちが力作を。佐藤典子作舞で、鈴木宏美とゲストの大前光市、金刺わたるなどが踊った『子守唄〜賽の河原考〜』は空気を支配するような神秘的で独特な世界、あすなろバレエスタジオの桧彩香振付で本人と濱中智子が踊った『鼓動』は滑らかさもキレもある動き。ビィ・ボディ・モダンの坂見和子自作自演のソロ『たそがれ...て』は人生の黄昏時を素直に表現したような。堤靖子振付で本人と辻田桜子が踊った『M』は、弱い光の中、コントロールされた身体が動く、言葉にならない何かが伝わってくるような気がした。

『ドン・キホーテ』よりジプシーの踊り 関口晴香 撮影:和田北斗(テス大阪)

『ドン・キホーテ』よりジプシーの踊り
関口晴香 撮影:和田北斗(テス大阪)

また、大前光市のソロ、マイレン・トレウバレフ振付『SWAN』は、福澤里泉のヴァイオリンに乗せて、さすがの出来。柔らかくなめらかな動きのなかから、せつなさ、それに激しい叫びが伝わる、良いダンサーだ。
そして、ラストはゲストの関典子。自作のコンテンポラリー『瀕死の白鳥』を踊った。黒いシンプルな布をまとっただけのような衣裳で、あのサン・サーンスの曲に乗せて彼女独特の動きで惹きこむ。ラストの"死"に喜びが浮かび、"死"が"開放"であるように受け取れる──もう、この作品を観るのは3度目になるが、つくづく良い作品だと感じた。
(2016年5月7日 サンケイホールブリーゼ)

『リズム・オブ・ゴールド』山田梨央 撮影:古都栄二(テス大阪)

『リズム・オブ・ゴールド』山田梨央
撮影:古都栄二(テス大阪)

『ダイアナとアクティオン』のグラン・パ・ド・ドゥ 弓場千如、高島康平 撮影:古都栄二(テス大阪)

『ダイアナとアクティオン』弓場千如、高島康平
撮影:古都栄二(テス大阪)

『子守唄〜賽の河原考〜』鈴木宏美、大前光市、金刺わたる、ほか 撮影:古都栄二(テス大阪)

『子守唄〜賽の河原考〜』
撮影:古都栄二(テス大阪)

『たそがれ・・・て』坂見和子 撮影:古都栄二(テス大阪)

『たそがれ・・・て』坂見和子
撮影:古都栄二(テス大阪)

『SWAN』大前光市 撮影:古都栄二(テス大阪)

『SWAN』大前光市
撮影:古都栄二(テス大阪)

ゲスト『瀕死の白鳥』関典子 撮影:古都栄二(テス大阪)

ゲスト『瀕死の白鳥』関典子
撮影:古都栄二(テス大阪)

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