京都国立博物館の"場"を活かした苫野美亜&松岡大のパフォーマンス『もののあはれ』
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ワールドレポート/大阪・名古屋
- すずな あつこ
- text by Atsuko Suzuna
苫野美亜、松岡大:振付、榎本多賀:着物、坂本弘道:音楽
榎本多賀が制作した着物をまとい、坂本弘道が生演奏する音楽の中で苫野美亜と松岡大が踊るパフォーマンス『もののあはれ』。
苫野はクラシック・バレエをスタートに、中村恩恵主宰の「Dance Sanga」などで活躍するコンテンポラリー作品に積極的に取り組んでいるダンサー。松岡は山海塾出身で、"場" を活かしたパフォーマンスなどに積極的に取り組んでいるダンサーだ。そんな4人のアーティストのコラボレーションで、2月27日、28日には東京・上野の森美術館ギャラリーで公演。私が観たのは、その後、3月14日に京都国立博物館で行われたものだ。
京都では、博物館の休館日であるこの日に、庭園でパフォーマンスが行われる予定だったのだが、私の観た13時の回はあいにくの雨で庭園ではなく博物館の広い廊下で行われた(15時半の回は雨があがり、庭園で上演できたそう)。
苫野美亜
撮影:©Ituka Sato(すべて)
お天気が残念と言えば残念だったのだが、この廊下もなかなか良かったと個人的に思う。幅の広い廊下で庭園が全面ガラスの窓から見渡せ、ガラスの向こうにも立つことができるという場所。廊下の途中で坂本が演奏し、ダンサーは廊下だけでなく、窓の外にも出たりしながら踊った。
雅楽を思わせる部分があったり、耳障りにも感じる音があったりの坂本の音楽、そこに着物。着物制作の榎本は沖縄の紅型を学び、豪華絢爛な着物というよりは素朴さを持った、人がまとって自然というような着物──それがダンサーの動きでさまざまに形を変えるのが興味深い。シンプルであるからこその変化だ。それは今回のダンサーの動きにも通じていて、余計なものを捨てて研ぎ澄ましたからこそ生まれてくる動きの変化が魅力的に感じられた。動物的な動きと人間的な動きが上手く組み合わされているのも良かったように思う。長く奥まで続く廊下を近づいたり遠のいたり、庭園を背景に見せる動きがあったり、"場"もさすがに効果的に使われていた。
(2016年3月14日 京都国立博物館)
撮影:©Ituka Sato(すべて)