大阪フィルの「コンサート+バレエ」、下村&佐々木、上野&柄本、青山&中家がチャイコフスキーを踊った
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掲載
ワールドレポート/大阪・名古屋
- すずな あつこ
- text by Atsuko Suzuna
大阪フィルハーモニー交響楽団「コンサート+バレエ」
「オール・チャイコフスキー・プログラム」
井上道義:指揮、下村由理恵&佐々木大、上野水香&柄本弾、青山季可&中家正博:出演
大阪フィルハーモニー交響楽団が初めての企画として「コンサート+バレエ」という催しを行った。
今回はオール・チャイコフスキー・プログラムという舞台だった。
前半は演奏のみ(バレエはなし)で、関西のバレエファンには、昨年、法村友井バレエ団が上演したことで記憶に新しい幻想曲『フランチェスカ・ダ・リミニ』と『ロミオとジュリエット』。『ロミオとジュリエット』はバレエではプロコフィエフ作曲のものが使われることが多いが、マッツ・エック版などで使われているものだ。
そして休憩を挟んで後半は、チャイコフスキーの3大バレエということで、グラン・パ・ド・ドゥを3曲。舞台の奥半分にオーケストラが並び、その前でダンサーが踊る形だ。背中で踊りを感じつつの指揮は、通常とは違い大変そうだが、井上道義はそれを楽しみにながら行っているように見えた。その指揮の井上がトークで作品の紹介をして踊りに入る形だったのだが、このトークがとても楽しかったのが印象的。『眠れる森の美女』の前には、「これは16歳のオーロラ姫が眠る話です。16歳っていうのは成長期のせいかよく眠るんですよね。それくらいの年頃の娘を持ったお母さんは、『もう、うちの子いつまで眠るのかしら』って。なんとオーロラ姫は100年も眠ってしまった。116歳の下村さんが踊ります」という感じで、関西らしく客席をジョークで笑いに巻き込みながら進めていた。
『眠れる森の美女』より 撮影:(c)飯島隆
『くるみ割り人形』より第14曲 "金平糖の精と王子のグラン・パ・ド・ドゥ" を踊ったのは青山季可&中家正博。お菓子の国の甘い魅力も感じさせる青山とフレッシュながら堂々とした中家の踊りが見られた。
続いての『眠れる森の美女』より第28曲 "グラン・パ・ド・ドゥ" は下村由理恵&佐々木大。二人ともベテランらしくメリハリがきいた深みを感じる踊りで、横長の踊りにくい舞台でも、佐々木のジャンプがスペースが狭い分だけ上へ飛ぶような感じで見せるなど、舞台の使い方が上手いのはさすがだった。下村の歌うような伸びやかさも印象に残った。
『眠れる森の美女』より 撮影:(c)飯島隆
『くるみ割り人形』より 撮影:(c)飯島隆
『くるみ割り人形』より 撮影:(c)飯島隆
『白鳥の湖』より 撮影:(c)飯島隆
最後は上野水香&柄本弾で『白鳥の湖』より"黒鳥のグラン・パ・ド・ドゥ"。東京バレエ団で少し前にブルメイステル版上演があったので、ブルメイステル版を観せてくれるのかなと思ったが、そうではなくプティパ、イワノフ版だった。上野は恵まれたスタイルを活かして高く上がる脚、スパッとシャープさも感じさせてとてもカッコいい。王子の柄本が若く純情な王子にぴったりの雰囲気だったのも良かった。
公演が行われたフェスティバルホールの客席は、音楽ファンとバレエファンがほどよく入り交じって、音楽ファンはバレエの魅力を、バレエファンは音楽の魅力を再認識しているようだったこともとても良かったと思う。
(2016年2月23日 フェスティバルホール)
『白鳥の湖』より 撮影:(c)飯島隆
『白鳥の湖』より 撮影:(c)飯島隆
カーテンコール 撮影:(c)飯島隆